氷柱

『雨音の国』
春休みが終わって
新しい生活にも慣れ始め
そろそろ五月の連休の話題がちらほら聞こえる頃
昨日からの曇り空と冷たい風は
ついに私たちの街に久しぶりの雨を運んできたわ。
いろいろ忙しいことがあって
それが次第と楽しくなり
いいお天気につられる気分のおかげで
日々順調な出来事が続いているように思えるから
知らず知らずのうちに
夢中になって汗をかいて──
気がつかない疲れが溜まる頃だと思うのよね。
不安で一杯だった
新しい教室の一日目と
緊張しっぱなしでも自分なりにやるだけのことはやって
そんなに悪い思い出にはならなかった自己紹介なんかの
ギャップがいけないんだわ。
友達作りが簡単なことではないと知っていても
勇気を出して声をかけるだけでもと挑戦したら
みんなが緊張して不安だったことがわかったりして
顔を見合わせて安心するし──
この瞬間の肩の力の抜け方が
新生活の落とし穴なのよ。
急に距離が縮まったような気がしてしまう。
だからつい
放課後もなるべくなら話をしたいと思って
ファミレス、
ファストフード、
小物のお店、
本屋さん、
少し気分じゃなくても
まあいいかと思うから
ああっ
普段しない寄り道のせいで
お財布の中身が!?
ということもあると
私も友人からの相談で学んでいるから
きっと妹たちも大変になる頃だろうと気を引き締めているのよ。
あなたも妹に頼られたときのために
浮かれがちな季節ほど気をつけるように。
そんなわけでそろそろ
生活を見直して
改める時間が迫っている。
この雨はちょうどいいわ。
ついでにもうひとつ
お姉ちゃんから怒られて家の用事をするんだって理由をあげたら
さっさと帰ってきてくれる。
暇をもてあましたら本当に手伝いもしてくれるかもしれない。
雨っていいわね。
私の小さな妹たちが慕っているお兄ちゃんは
みんなの帰りが遅くなってもおろおろしたりさみしそうな顔をしたりするだけで
怒ったりなんてできないんですから。
まあ、みんなにきつく言うのは私だけで充分かもしれないし
あの人が怒ったりする姿を見せる人は
ふだんからあんまりかわいくない子が
調子に乗りすぎたくらいででいいのかもしれないし……
それにしても、春のせいで家族が浮かれすぎている気がして
私、ちょっと口うるさくなりすぎているような気もする。
誰かに怒られても仕方ないのかもしれないわ。
でも、そんなことができる人じゃないか。
外で遊べない子たちがいるから
今日は早くから家の中がにぎやか。
きっと布団に入ってしまうのも早いと思うわ。
久しぶりに静かな夜更けが訪れたら
私の小さな妹たちは雨音の中で何を思うんだろう。
季節のせいで誰も落ち込んだりはしないかも、という
やけに自信を持って言える予感があるのはいいことなのかしら。