春風

『ねがいごと』
なぜか……
昨日から
カレーライスとおにぎりを作りたくなってしまったんです。
不思議でしょう?
あんまり合う組み合わせではないと思うんだけど。
もちろん、なぜかというかとぼけてしまいましたが
霙お姉ちゃんの食欲が原因です。
食べ盛りなのかしら──
おまけに立夏ちゃんのお好み焼きのリクエストや
星花ちゃんのたこ焼き希望の声など──
どこかでお祭りでもあったのでしょうか。
吹雪ちゃんも顔を上げて
おにぎりなら持ちやすくて良いと言うの。
かわいいちっちゃな手でこぼさないようにつかむおにぎり。
なるほど──たくさん食べられそうです。
でも、持ちやすさと引き換えに
よそ見をしながらの食事がしやすくなってしまうのが問題ですね。
家の中ではお花見と違って
多少のお行儀の悪さは見逃していられないですから。
まったくみんなもう、食べることにはわがままですね。
それなら妹たくさんの経験が豊富でなんでも受け止める
包容力自慢の春風にお任せください!
順番ですねと言い聞かせて
まずはいちばん得意なカレーライスからとなります。
魔法のようにあめ色に変わるまで炒めた玉ねぎ、
ぐつぐつと音を立てる鍋を踊るおたまのステップが
円を描いて
まるで誰かとワルツを踊っているよう。
お鍋の中に恋が生まれたのかも?
欲張りな霙ちゃんのもうひとつの願いはかなえてあげられないけれど
そのくらいならきっと自分で何とかすると思います。
春風も欲張りだから気持ちは良くわかるの。
どうしても、不器用だと知っていても
挑戦しないではいられなくなるときがあるんです。
たとえば──子供の頃から信じていた王子様が
ついに現れるという幸運な日を迎えて
それからさらに結ばれたいとか
いつまでも一緒に暮らしたい、
たとえどんなことが未来にあっても
愛しさに胸が締め付けられて涙が出てもあなたといたいと願ってしまう。
悲しい予想も、つらい悩みも
ひとつも止める理由にならない思いがあるということ。
どうして昔の人は欲張りすぎると
罰が当たるなんて言ったのでしょう?
恋する気持ちを知らない人なんてあるわけがないのに……
でも、いけないと叱るのはそういうことをしてしまうのを
抑えるためだから……
はっ!
まさか昔の人は
春風の無限大の欲張りをさらにさらに大きく超えていってしまうから
こうして誰かが止めないといけなかったのでは?
昔の人はすごいです。
欲張ってきりがないのは春風が一番だなんて決めてしまって恥ずかしい──
まだまだこれからだったんですね!
今日は自慢の得意料理のカレーライスを
おいしく食べてもらうことが大きな望み。
霙お姉ちゃんは宇宙もその向こうへも羽ばたいていこうとするはてしない希望を
広げていくようなことを言いますが
春風の今日も誰にも負けない宇宙をどこまでも満たしていこうと広がる願いは
おいしいとよく褒めてもらえるカレーライスを
いつも以上の愛情レシピで作ってみたので
また喜んで食べてもらうこと!
みんなの笑顔を思い出しながら
明日もその先の未来も
やっぱりみんなのうれしそうな顔を見るために
続けていきたい春風の野望は
宇宙がどれだけ大きくても収まりきれないと自信を持っています。
これからますます大きな夢になっていくことも100パーセント確実。
天文学的な規模を超えた愛は確かにあるのだと
あなたにもカンタンにわかってもらえるはずです。