氷柱

『変わりやすいもの』
秋の天気は当てにならないというけど
本当ね。
厚い雲が空を覆い始め
風に湿り気が混じってきて
肌寒さを感じるようになれば
もうこれは放ってはおけないと
庭で遊んでいるみんなを呼び集めるの。
子猫みたいに嫌がるのを押さえつけ無理に服を着せたら
たちまち差し込む
暑くぎらぎらしたお日様!
ユキはとなりで大人しくしてくれて
いつも気を付けてくれてありがとうって言ってくれるけど
私の限界はこの程度でしかないの。
情けないお姉ちゃんね。
なんていうところを
また頭の上で広がる黒い輪郭よりも先に
前触れ一つなく
予測もしていなかった強風が
ごうごう吹いてくるんだから
地上のちっぽけな人間は
あたふたするほかに
どうしたらいいの?
っていう話よね。
せめて雨にならなかっただけでもましだと思うべきかしら。
慌てて着せた服でも間に合わなかったみたいで
ホットミルクを口に運んでぶるぶる震えている
小さな妹たちを見ていると
天気もわからない人間の愚かさを嘆いたらいいのか
大自然に感心するところなのか
さっぱりわからなくなってくるわね。
とりあえず私たちには困ったときに逃げ込む暖かい家があるんだから
それでいいか、
だけで思考が停止してしまうのもどうなの、という話だし。
まあ、ここはその気がなくても
みんなのために私が完璧なお天気予報を見つけ出してみせる、
くらいのことは言ったほうがいいのかな。
でもみんな、さっきの怖い風のことはすっかり忘れたらしくて
ずっと前から変わらず暖かいところで過ごしていたみたいにほくほくしているし
ユキも私のほうを見てニコニコしているし
別にいいのかな!
細かいことは!
みたいな気がするわね、
妙なお天気の日は。
下僕も鈍感で単純なりに
少しはお天気で困ることがある季節かもしれないわ。
氷柱は何にもお役には立てないかもしれないけど
お風呂だけは掃除して待っていてあげる。
みんなが入るついででいいならね。