真璃

『マヨと隠し味と』
かっこいい女の子になるには
好き嫌いなくご飯を食べるのも
だいじなことのひとつ。
体を作る手助けは
元気いっぱいのいただきますと
つるりんと輝くお皿を並べたごちそうさま。
いーっぱい食べて
あのオリンピックで輝くお兄さんやお姉さんたちみたいになる。
世界に向けて戦いを挑む
勇敢な笑顔──
本気になったときのうつくしいまなざし!
どうしたらなれるのかしらと
小さい子たちで相談し
海晴お姉ちゃまたちをつかまえて
しつこくたずね続けてついに教えてもらった秘密が
とりあえず今のマリーたちにできるのは
なんでもおいしく食べること!
栄養バランスを考えてくれている春風ちゃんや蛍ちゃんたち、
いつかたくさんのことを学んでお姉ちゃんたちの背中に追いつけるように
ぜんぶ残さずいただくの。
おやさいが──
大きくなれって
マリーたちを応援しているというわ!
そんな声はちっとも聞こえないけど
まあ、大きくなれば違うかしら。
すぐにスポーツマンを目指すメニューは用意できないから
今夜はきのうの残りものを利用したチャーハンや餃子に
あと付け合せのサラダという感じだけど
みんなが輝く未来はここから道が続いているんだって
目をきらきらさせて
おくちもいそがしくもぐもぐ。
そう簡単に決意を翻すわけにはいかないと
もりもりいただいているのよ。
なぜか春風お姉ちゃまや蛍お姉ちゃまが
こんなところでも子供たちをかっこよく引っ張ってくれているなんて
やっぱり真剣になった人たちは違う!
日本に帰ってきてくれたときに
ありがとうと言えたらなって
別に会えるわけでもないのに勝手なことばっかり言ってるのよ。
でも、ありがとうはマリーだって言ってみたいわ。
見ているだけのこっちにも
大きな舞台でぶつかりあう緊張も興奮も悔しさも喜びも
その一部でも伝わってくる感じは
まあ錯覚か気のせいかもしれないけど
きっと全部が気のせいではないんじゃないかなって思いたいの。
テレビ越しの観戦と応援だけど、小さなマリーたちにはそれでも充分すぎるくらい。
楽しい体験の日々だったな。
とはいえ、このまま毎日サラダというのも
もうすこし味が欲しいから──
こっそりひそかにマヨをプラスなんてどう。
お皿のふちに乗せるの。
こんな隠し味もしっかり駆使して
おいしく食べるのが好きになるのがいちばんだものね。
どんな時にも喜びを探すことにかけての隠し味も
マリーは譲れないわ。
オリンピックに出たら、世界と競えるいい勝負ができるはず。
自信だけでメダルは取れないかもしれないけど
いざというときに頼りになるのも
訓練を重ねてきた自分を信じること──
なのかもしれないって思いました。
このマヨがいつかマリーの手の中で
ちゃんと自分自身で栄養を考えた
特製ドレッシングか何かに変わっているとき──
たぶん少しはあこがれに近づいている、かもしれない。
大きなお姉さんたちに向かって一歩を踏み出すときが今なのよ。
さて、よく食べたから明日は体を動かす番……
フェルゼンももちろん
マリーを輝く未来へと繋いでゆく鍵なの──知っているでしょ?
今から覚悟をさせておいてあげる。
フェルゼンと遊ぶのが一番好きなマリーやみんなと
一緒にたくさん体を動かしてもらうんだからね。