夕凪

『おめん』
ドキドキして
気になる──
リビングに置いてあった
謎のおめん。
赤くて
目の所が空いていて
にやりと口を吊り上げている。
ハロウィンの準備で見た気がする。
顔が出ていないとかわいくないからって
しまいこまれたおめん。
なんでここに?
歩いてきた?
夕凪、大変なことに気がついちゃった。
これをかぶったら
誰も夕凪のことが
わからなくなっちゃう。
謎のおばけがあらわれて
にやにやわらう!
おいしそうな
まるまる太った子供を
みつけた
ぞー!
ぞー!
ぞー……
夕凪でした。
おどろいた?
って、できちゃうんだよ。
ど、どうしよう……
ちょー
たのしそう……
お兄ちゃんをびっくりさせてみたいよ!
おめんを取って
夕凪かーって安心するお顔を
見たい見たい。
だめだよ、夕凪!
今は夕凪がチャームをかける
かわいいおねだりマホウの途中だよ。
良い子にして
お勉強をするから
だから冬休みは
暖かい南の島で過ごしたいです、の交渉中。
行けそうならハワイ!
ぜったいハワイ!
トロピカルなココナツ味のリゾート!
でも、お泊りでお出かけできるならわりとどこでもいいけど。
そんな時にいたずらをして
お出かけがだめになったら
悲しすぎるじゃーん!
夕凪はわんわん泣くよ。
自信がある。
目を真っ赤にしてもやめない自信がまんまん。
だからおもちゃのおめんは
もう、そんな年ではありませんって置いていくの。
ちらっ……
いたずらの道具なんて欲しくもなんともないよ!
ちらっ……
でも……
お兄ちゃんは夕凪のこと
いい子だって知ってると思うし
一回くらいおどろかせても
きっと、そんなに怒らないと思うんだ。
だめっ!
だめだめっ!
ほんとの良い子にしていないといけないんだもん。
もーっ
誰が出しっぱなしにしたの!
おめん、しまわなきゃ。
ぴたっ。
当ててみただけ。
それにしてもこのフィット感……
夕凪がみんなをおどろかせるために作られたおめんに
まちがいない。
ううん、夕凪はがまんします。
いい子にして
ピーマンも残さないで食べる。
きざんでハンバーグに混ぜているのが食べたとたんにわかっても
ちっとも怒らないの。
だから冬休みのお願い
みんなにきいてもらえたらいいなぁ。