『図工の時間』
のこぎり
とは！
それは──
いつ見ても
落ち着きがなく
テンションＭＡＸの
夕凪ちゃんでさえ
真剣な顔にさせ、
口を一文字に結ばせるもの。
夕凪ちゃんの授業を見たことはないけれど、
なにしろ立夏でも授業中は
大人しくなって
お友達におどろかれるほどだもの！
みんなは今も
言うよ──
のこぎりがあんなにも
立夏ちゃんにてきめんだなんて。
一目でこれは
慎重に扱わないとまずい、
怪我だけには気を付けるようにと
本能が呼び掛けてくるのは
あのとげとげ、
悪魔のようなフォルム。
だから、夕凪ちゃんが
工作のくぎちゃんを
持ってきて見せてくれた時──
ははあ、これは
夕凪ちゃんでも
間違いないはずだ！
と。
立夏はこっそり
聞いてみたの。
こわいよね──
のこぎり。
とげとげだよっ。
夕凪ちゃんもぶるぶる震えて
こわいって抱き着いてくるの。
あんなにこわいのこぎりを
自由に扱えるのは
お兄ちゃんくらいしかいないのではないだろうか？
壊れた家具を調べて
よくなおしてくれる
お兄ちゃん──
でも、のこぎりだけは
使っているところを見たことがない。
立夏や夕凪に見せると危ないからかな？
だいじょうぶ！
大人しくなるよ！
立夏の作ったくぎちゃんはどこにしまったかなあ。
夕凪ちゃんのと同じ顔をして
ちょっぴりびくびく
助けに来てくれる誰かを待っているよう。
まるでさみしいときの立夏みたいに──
オニーチャンにも見てもらいたいな！
