吹雪

『マイルーム』
9月も終わりになります。
体力を奪う暑さの毎日だった真夏から
一ヶ月ほどの時間が過ぎると
過ごしやすい気温に変わりました。
朝晩の温度差に注意するようにとよく言われますが
昼間は涼しい日陰を探すことが多いため
私には、他の人よりも不快さは少ないと思われる環境です。
もう少し秋が深まり、冬が近づくと
寒すぎる場所には一人でいられなくなるかもしれない……
そう考えると、今の貴重な状態を大切に扱うほうがよさそうです。
いつも暑さが残る午後の時刻には、
涼しく風通しの良い場所に腰を落ち着けても
すぐに大きな足音が近づいてきて
あたりは人で一杯になってしまう、という毎日が続いていました。
それがここ数日は
最後の集中的な練習が続いている運動会の準備で
庭を遠ざかり、たまに近づいては離れる声が小さく聞こえるばかりで
一人の部屋にいれば静寂を乱される不安はなく
本に目を落とせば集中が途切れないまま
いつまでも長い間、新しい知識の世界に浸りきり
このまま途切れることのない喜びのときが続くのではないかと
期待をすることもあります。
もう誰とも顔を合わせることも出来ないのではないかという
子供のようなありえない想像。
絶対に起こりえないことを考えて不安になり、
だけどそんな考えだけで
見たことのない世界に迷い込んでしまった気分になるという遊び。
ふと顔を上げて周りを見回し
誰もいない部屋に気付いたとき
本の世界と現実をつなぐありえない幻を思い浮かべてしまう。
このような得がたい午後も、たまにはいいものですね。
図書館から借りてきた本はすぐに片付いてしまう。
ときどきこんなふうに一人になる自由もあればいいのに。
大きくなるまでは部屋を姉妹で共有する我が家のルールなので
思うように行かないこともあります。
やはり、天井裏の小部屋を解放してもらうように求めるべきだろうか。
でも、ほこりっぽくて虫が多く出るのは
みんなで忍び込んだときにわかっているのだし
せめて掃除が得意な仲間を探すか
自分でそれなりにできるようになるか──
運動会の練習に参加できない人は
疲れたみんなの代わりに明日のお弁当作りを担当するという約束になっています。
家事を教えてくれる先生は我が家には多い。
いつかは思いの通りに快適な部屋を整備することが出来るのでしょうか?
まずはお弁当のデザートつくりを担当します。
りんごの皮を剥いて、片付ける。
将来の目標の第一歩になりそうです。