吹雪

『スロー・チューズデー・ナイト』
明日は休日です。
いつもならもう少し早い時間に
にぎやかな声がベッドへ向かう
日曜日の夜は──
このごろ戻ってきた暑さが
暗くなってもまだ残っているみたいに
なんとなく熱気が消えないままです。
みんながもうあとちょっと
話をしていたくてならないらしくて、
曇り空を見上げた朝の
そわそわした感じ、
まもなく後のよく晴れた秋空の下の出来事や
お弁当の感想などを
どうしても今日のうちに伝えておきたいと
興奮した顔を見せている。
うちの家族には
張り切って応援したときの大きな声や
グラウンドを蹴って駆け抜けた感覚よりも
晴天を見上げながら食べるお弁当のほうが
大きい重要なイベントだと思っていた子も多いのではないかと
多少疑っています。
おにぎりもサンドイッチもあって
好みで選べるのはいいですね。
食パンにつけるジャムのビンも
開かないということはなかったので助かりました。
コツがいるというビン──
どこの家庭にもあるのかもしれませんね。
でも、キミは運動競技への出場が多かったので
疲労も蓄積しているであろうと思います。
お疲れ様でした。
参加賞のお菓子も充分な量を確保できて
麗姉にも受け取ってもらえたことだし──
たくさん食べた分の運動量を確保するためのおうち運動会は
そう遠くない日に開催されると予想できます。
どうかそれまで疲れを残すことのないように──
ゆっくり休むためのシーツも
いたずらせずにみんなの分を用意してあるそうです。
ほんの一日だけの出来事を
またやって来る休日の前、
眠るまでの間──
余裕のある時間で話し合いたいと
思っているだけなのに
いつまでも話す言葉が尽きないのは
どうも不思議なものです。
思い返すよりも濃厚な一日を
キミと共にいたような気がしてくる、
おそらく私一人の気持ちではないのでしょう。
眠りを必要とする疲れた体を支える
とめどない記憶、
少しずつ小さくなっても終わらず湧き出す
聞いてもらいたがっている言葉の集積が
私たちの一日の密度を証明しているようです。