さくら

『ひざ』
さくらにあって
お兄ちゃんにもある
ちょっといいもの。
ひざ。
とおくまで走ったり
ならんで座ったり
転んでぶつけたり
まくらにできたりするの。
ちいさなさくらにも
そんないいものがあるなんて!
お兄ちゃんのひざ
座るとたのしいな。
まくらにするとゆかいなの。
そのまま眠ってしまえる。
しがみついたら
お兄ちゃんによじのぼったりもできる!
ねっ、いいでしょう。
お兄ちゃんはさくらによくひざをかしてくれるよ。
やさしいおねえちゃんたちのやわらかいひざ。
大きなお兄ちゃんの
ひろびろ大きなひざ。
さくらがにっこりよろこんでいるよ。
おかえしにいいものあげる!
さくらのひざを
お兄ちゃんにかしてあげる。
おねえちゃんにもどうぞ。
だけどちびっこのさくらのひざは
まだまだちいさいの。
ゆうべ
おさかなをのこしてしまったから……
大きくなれなかったの。
ちいさなひざは
ちょっとかなしいひざ。
なみだもこぼれます。
やわらかいひざだったらなあ。
大きなひざだったらなあ。
みんながよろこぶような──
あと、あんまりころばない子のきれいなひざであったらな。
そうしたらさくらはお兄ちゃんの
じまんのひざになるでしょう?
座っているさくらの
なみだがこぼれるひざに
うれしそうにのぼってきてくれたのは
あーちゃん!
うれしいおうたをうたっているよ。
あっぷっぷーって。
とってもはしゃいで
ちょっととなりをみて
お兄ちゃんのほうにむかっていったの。
……
お兄ちゃんによじのぼったの。
さくら、のぼれないもんね。
のぼりたかったんだよね。
お兄ちゃんのボタンは
あーちゃんにねらわれたよ。
かみのけもひっぱられた。
ひざがまっていたんだよ。
みんなみんな、するどいめで
じゅんばんをまっている。
みんながよろこぶばしょはどこだ?
大きくてひろい
あたたかなもくひょうはどこだ。
お兄ちゃんは知っている?
さくらがおしえてあげる。
それはさくらが
今もねころぼうとしているひざだよ。
にげないでね!