『迷い道』
お兄ちゃんは、ちょっと時間が空いたときに
何からはじめるのかな?
雨模様で少し寒くなり
みんなが夏服の片づけを始める日には
蛍はお手伝いできることがあまりなく──
日曜日には、これから台風が来たら困るなって思って
両手に多めの買出しと、日持ちしそうなメニューの作り溜め。
そうしたら今日は
帰ってすぐ宿題を終わらせると、手持ち無沙汰で宙ぶらりん。
みんなも忙しそうで遊んでくれないみたいなの。
幼稚園から下の子たちもマリーちゃんの指揮のもと
服のしまい方を覚えるの。
あーちゃんだってまだパンツには早いのに
もうしまう場所を覚えてタンスの前で
ごきげんに踊るんですよ。
季節がゆっくり変わる頃
いつもあわてていた記憶ばかりなんだけど
こういう日もあるんですね。
まあ時間があったらそのうちしたいと思っていたことなら
半端に作ったまま止まっていたコスプレ衣装の製作だったり
積んでしまった本の消化、録画した番組を見直したい、
それともこんな機会は思いっきりゆっくりしようかな?
でもなんだかそれももったいない気がするな……
予定になかったまだ心構えの出来ていない空き時間に
ほんのちょっと弱いみたい。
このパターンは迷っているうちに
何も起こらず終わってしまうとわかっている。
終わってみればまあこういうのいいか、で済むのも確かなんだけど。
めずらしいな。
蛍が思いがけないお誘いの訪れを待っているなんて。
わりとテンションが上がったら、お兄ちゃんのところにちょっと強引に押し寄せて
お掃除をさせてもらったり着替えを運んだりするのが好きでいたら
夏の暑さが今ごろになって響いてきたのでしょうか。
それとも近づくアンニュイな季節に
ついに心を動かされる年頃に?
そうだ!
こういうときにお姉ちゃんたちはよく
目的もなくそのあたりを散歩して
大人っぽい雰囲気の横顔。
蛍もよく知らない道を歩いて面白いものを見つけるでしょうか。
たまにはちょっと当てもなく歩いてみるのもいいのかもしれません。
なにかおみやげなんかお見つけたくて
目をくりくりさせてばかりいないで落ち着いた蛍が帰ってくるかしら?