ヒカル

スクランブル』
よく行く駅の
よく行く道路の
当たり前の景色が
新しい春になって……
変わってしまう。
これからは時間を区切って
スクランブル交差点になるんだって。
買い物でも散歩でも
迷子を探す時も
用がなくても
わりと歩く場所。
駅ビルが北に向いている
日当たりのいい明るい景色を
これからは今までと違った目線で
見つめることになる。
迷子は探しやすくなるのだろうか?
いや、寄り道をする連絡があった立夏や麗を気にして
呼ばれもしないのにうろうろするだけだから
人に言わせたらちょっと理解は違うらしい。
そこで
新しい交差点の様子を見るのと
せっかくだから交通ルールを確認するために
マリーと虹子と行ってみた。
晴れていたし。
いい天気なら用がなくても
好きな人と手をつないで出かけるものだ。
そうだろう?
私の横にマリー。
マリーの横に虹子。
このメンバーばら
私はマリーと虹子の様子をちゃんと常に確認していないといけない。
車の通りもある道路だから。
マリーはお姉さんとして
虹子を見ていないといけない。
そして虹子は
危なくないように上のお姉さんのいうことを聞かないといけない。
それぞれが肝に銘じる
おでかけのときの
決して変えたりできないルール。
よそ見をしても
離れない。
どこにも行かない。
今、人波でマリーと虹子が頼れるのは
ただひとりだけ
私しかいないのかもしれないし……
しっかりしているから大丈夫かもしれないけど。
もうスクランブル交差点の渡り方は大丈夫みたいだよ。
まっすぐ青信号しか見ない二人だ。
どうだろう。
信号から目を逸らさないのは三人に見えて
実は私がつないだ手をずっと気にかけているように
マリーもやっぱり
使命を忘れなかったり
虹子もいい子でいるようにと胸に刻んでいたり
ちらりと横を見て
人の数にびっくりしているのかな?
おそらく今回は
成功して帰って来れたんだと思う。
手を引っ張り走り出すのは
見慣れた家が
すぐそこまで
あとちょっとのところまで見えてきてから。
もちろん、急に車が来ないかを
私がマリーの分も調べ、
マリーが虹子のために気をつけたあと。
虹子がいい子でお姉ちゃんの言うことを聞きながら
待っていてくれる遠くの顔に
空いている手をぶんぶん振ってからだ。
それを見たら私も手を振るんだ。
大きくなっても
急ぎ足で進むたくさんの人がいる世の中でも
私はまだ覚えることがいっぱいだな。