立夏

『裏路地』
おしゃれなお店が並ぶ
ストリート。
眠りかけたほこりっぽい眺めもストリート。
よく歩くのはどっち?
季節の変わり目が来て
いろいろなことが新しくなり
大事なハートがフレッシュ感であふれる一方
明るい通りも静かな道も
改装と休業のお知らせは並びます。
ちょっとお高いお店の
でかでかでっかいハンバーガー、
お口をあけてかみつく夢……
こがね持ちの大人になるまで待ってくれないなんてさいてー!
無情な貼り紙
固く閉ざされた扉。
この暖かい日に
冷たく凍りついたような冬将軍のしわざ。
もう誰も氷の呪いを解くことはできないのだ。
悲しい別れがあるんだねえ。
大きく飛び跳ねるために
ぐーっとかがむみたいな。
かがんだときの街の色。
立夏がおうちの影に入っちゃった。
花が揺れるきれいな枝は遠くなっちゃった。
でも狙いをつけて
目指した場所まで高く飛びたくて。
あわよくばもっと上で景色を見たいし
掛け声を合わせて
もう一人で寂しいって言いたくないし
そしたらバランスを崩して
転がってる。
地べたを這う低い角度。
ああ……
せっかくタメを作ったのに
もうどこにも届かないのだ。
そんなごっこをしてから立ち上がったりね!
あのねー
人前で飛び跳ねたら怪しい人だ。
だから別になにも見えなくても言ってみるの。
おおっと
何か見えた気がするよ。
風に揺れていたような
すぐ隠れたような
いいものだった気がするよ。
だってそこは
明るかったり暗かったりする街並み。
もうちょっとで見えそうな気がするって
言ってみるんだよ。
いちにい
さんっ!
いちにい
さんっ
しぃっ!
もっともっと!
まだまだ!
もういっちょ!
まだいくよ!
終わらないよ!
最後にもいっちょ!
いいからワンスモア!
いいかんじ!
あと──
一回だけ。
それで、見つかりそうだよ。
本当は
別に全然思ってなくてもいいんだよ。
ちっちゃい子が──
お兄ちゃんっ子で、隣にいると調子に乗っちゃう子が
今しかないとでも言うように
探している。
叱られながら
ぐっと身をかがめて
ワンチャンをねらう。
なぜか楽しいからね。
桜が開いた通りをオニーチャンといるから。
いつか魔が差して隣で跳ねるかもしれないって期待するの。
そういうお話。
それだけ!