立夏

『ロックスター!』
だーいじょうぶ
だって!
ば!
ちょっとくらい
お正月に食べ過ぎたからって。
なにしろ
いっつもエネルギーが必要で
立ち止まれない
動いていないと死にそうな
まぐろむすめ!
立夏だもの。
まぐろむすめは
なかった!
なにかもっとかわいいものだと思うヨ。
でも、
オニーチャンも想像できないでしょ?
リカが
おとなしいかおで
ふつうにしている!
なんて。
ないよね、
思いつかないよー。
あまりにも遠い
おしとやかな
いっぱんてきな
きまじめな
おじょうさまな
深窓の
れいじょうな
おとなっぽいリカなんて
リカなんて──
うええん!
どうせガサツだよ!
まあいいや。
いつも元気で
明るい声をいっぱいにふりまいて
さんさん
ぴっかぴかなので!
まぶしいほどなので。
というか、そんなかんじになりたいので。
なんか立夏を見ていると
元気がわいてくるなあ、
この子は太陽なのかな?
それとも
オニーチャンのすてきな天使なのかな!
と、
オニーチャンは思うくらいに
いつもありたいので
見て見て、
分けてあげたい元気があふれているんだよ、
こっちを見てほしくて呼んでいる
いつも大声で
だいすきーって叫んでいる
立夏だから。
だいすきー!
多少のカロリーが余分でも
使っちゃうよ。
むしろ足りないくらいだよ。
なにあの
おせちって!
ちまちま
かわいいのはいいとして。
きれいなのもわかるよ!
リカちょっとあこがれるよ!
でも、
まぜてーって飛び込んだら
さすがにこれはまずいかな、
おせち。
お上品にちょこん、ちょこん
おはしでちまちま
だんだんと──
崩すのがなんだか悪いような、
みたいな。
いや、食べたけど。
ごはんをおかわりもしたのに
何を言ってるんだろう立夏は、
ブラックホールなの?
そこなし?
って、オニーチャンは
ときどきリカのことを
驚異のまなざしでじーっと見ることが
あるような。
見つめてもらえるのはうれしいよ、
笑顔をかえすよ!
にかっ!
がんじょうないぶくろも自慢だよ?
でもおせちは
なーんか
食べてすぐ寝て
ああ、牛になりたい
あの満足感とは何か違っていたので
両手を合わせてごちそうさまでした、も
食べ終えた後は
少し上品な女の子になった気分で
大人っぽい優しい響きで。
いやまあ、
けっきょく食べ過ぎたから
予想外の体重。
おせちはばくばくいけなかったから、
おもちの分か!?
まあ他の子から見たら
立夏ちゃんはおせちもばくばくして
お正月くらいもっとおしとやかでもいいのに、
みたいに
なんだかなごやかなおはなしになって
リカも一緒に笑っていましたけどさ。
あれー、おせちも食べすぎだったのかな。
でも、止まらない立夏
うしろを振り向いて後悔することはしないのでした。
蛍おねーちゃん、
こういう、ほら、
わずかに体重が気になるときは
楽しいことをいっぱいしてカロリー消費だよ!
まぶしく輝く
あこがれの人の視線を
自分ひとりのものに奪い取るため
れんしゅーちゅー!
とっくん
まっさいちゅー!
うたっておどって元気なおおごえ
リカを見て!
いっしょに元気になって!
二人でそろって笑顔になりたくてたまらない!
今日はアイドルというよりは
声を張り上げて
たてのりでシェイクする
これはまるで
スターだ!
かがやいてる?
リカのこと
見ないではいられない、
なっちゃう?
好きな人のことを目で追い変えている
もう心をつかまれてしまったリカのように
かがやくコツを
知ってるでしょ?
おしえてください。
おしえてよー。
鏡に映したみたいに
家族ならなれる?
むり?
憧れの人に
目の前のアイドルに。
ロックスターよりまぶしくきらめくおとこのこに。
魔法みたいにハートを奪ってしまう
たったひとりの初恋の人に
近づきたくって
おいかけてるよ。
明日は魔法使いになっておどるー!
げんきだぞー!
って。
いつも二人で楽しくしようよ、って。
あれ、明日は学校じゃない?
じゃあ放課後ね!
おうちに帰ってきてからね。
オニーチャンが一緒にいて
魔法みたいにリカをうれしい気持ちで包み込んでくれたら
うれしいよ、
なりたいよ、
ぜったいなる!
同じ気持ちにしてあげる、
だってリカはオニーチャンの妹だよ。
いつもオニーチャンのことが大好きで
止まらないで追いかけている女の子だよ。
わかってくれるでしょ?
心も体ももっと近づきたいんだよ。
そんな気持ち、
一緒にいたら
いつか伝えられるよ。
明日もいっぱいリカのそばにいてほしいから
迎えに行ってもいい?
手をつないで帰ってもいいでしょ?
いいよねー!
二人きりの時間をもっと作ろうよ。
どんなときも近くにいて
リカの気持ちを受け取ってね!