立夏

『ゴーゴー未来へ』
楽しかったお祭りが
終わったら──
後片付けだ!
やるぞ!
うでまくり。
女の子たちがキッチンに集まり
わいわいにぎやかに
お皿洗いから
やっつけていって
泡だて器、
ボウル、
温度計、
ボウル、
ボウル、
お皿、
ボウル、
型抜きの型……
わーん!
こんなに道具を片付けるところが
19人もいるキッチンになんて
あるわけが──
ないじゃん!
あ、今日は力仕事に
オニーチャンがお手伝いに来てくれているから
20人だ。
よかったね、男子禁制が解かれて。
やっぱり一緒だと楽しいねぇ。
って、ますます
キッチンがせまいよー!
リカ、実を言うと
面倒くさいとかの話じゃなくて
そんなに片付けたくないの──
この型抜きの型も
この温度計も
このボウルも
このボウルも
慣れない手つきの
なんにもできない立夏
優しいお姉ちゃんたちが暖かく助けてくれたしるし。
それでもって
なんにもできないのに
なぜか力がわいてきて
リカにチョコを作らせる力がどこかにあった
そんなしるし。
でも、朝とお昼は作りおきをお弁当にしたりできたけど
夜のごはんが食べられないと
立夏、なくなっちゃうもんね。
からしかたないの。
片付けないと──
でも、大丈夫。
立夏を動かした不思議な力は
今は形を変えて──
オニーチャンのおなかの脂肪となって生き続けているよ!
あと、リカの胸にもちょっと残っているよ。
きっときのうよりも暖かいもの──
キッチンをこんなにめちゃくちゃにする前より
うれしい明かりが胸に灯っている。
忘れないようにしなくちゃ。
不器用すぎて上手く作れなくて
まだ小さな思い出の灯し火。
両手で風をよけてあげて
大事に守らないといけない
ほんのりと幸せの炎。
リカの明かりはまだちいちゃい。
来年まで守り続けるのは大変なお仕事になりそうだ。
ねえね、そこの
リカのオニーチャン!
キッチンがめちゃくちゃになる前より
ちょっとふくよかで頼もしくなったオニーチャン!
うーん、このたくましい腕なら
お姫様を守るナイトには合格。
こっちから細くてぽっかぽかの腕を伸ばすから
手をつないではじめたらいいよ。
どんなに片付けがが大変でも、これなら困らない。
ボウルを重ねていこうよ!
よし、やる気が出てきた!
ん?
なに──
ええっ! 水滴はキッチンペーパーで
よく拭き取ってから!?
はぁーい……