立夏

『明日まで』
うっひゃー!
オニーチャンは
おしりに根っこが生えたことってある?
ただいまこたつに
丸まってもぐりこんだ
タイミングよくリカが
そのまっさいちゅう!
ううっ
もう
うごけなーい!
春が来るまで
こたつから出られない……
このままじゃあ
ごはんもおやつも食べに行けないし
こたつにあたりっぱなしで、のどがかわいたらどうする?
あっ、みかん。
はい、オニーチャン
あーん。
これが尽きたら
どうなっちゃうの?
最後の一枚の葉っぱが……
むかし、氷柱ちゃんに読んでもらった本。
リカのいのちづなは
みかんだったんだネ。
絵に描いても
食べられないねえ……
果実も
ジューシー!
おかわりちょうだい!
あーあ、
冬が終わったら
みかんの季節も終わり!
と思うと寂しいけど
でも今はやっぱり
さむいさむい冬は
とんでっちゃえ!
みたいな。
リカ、こたつにあたって
それまで待ってる!
ここを出ない!
たとえ
雨が降ろうとも。
おおあらしの
激しい風が吹こうとも。
なにものにも
もうまどわされない!
うごかない!
かたいけつい!
明日も寒いんだってえ……
オニーチャン、学校行くときはあたたかくしてったほうがいいヨ……
リカも、
リカは、
おうちにいるー……
だめだよね……
お友達と約束したし。
ホワイトデーに
ラブラブな日を過ごしたら
報告するんだ!
今のところの進捗状況
話し合うんだ!
それなのに。
ねえオニーチャン
ホワイトデーまでにあったかくなって
リカがこたつを出て行けるようになると思う?
いつもだったらこんな時
冬だからって
こもっていたらもったいない、
リカの元気で
体の中に夏が生まれて
どんな寒さも吹っ飛ばす!
オニーチャンにもおすそわけするよ!
くらい、言いたいのに。
まあ、今も
そんな感じに勢いつけて出て行こうかなあ?
うだうだしているところなんだけど。
でもこんなに寒いと
やっぱりね。
にんげんは
ちのかよった
肉でできているので。
さむいと動けなくなるようです!
吹雪ちゃんに言われなくたって
リカもじゅーぶん知っている。
うえーん!
もったいなーい!
でも
おしりの根っこが
かたすぎ!
ちょっといいかんじの
大きすぎないかわいいおしりなのにー!
オニーチャンも知ってるでしょ?
いつもよく動く
ぷりんっ!
ぷるるんっ!
はりのあるおしり。
ああー
おしりの表面から
こたつに生命力を
吸い取られるぅ……
うごけない……
そこで!
何か、リカがこたつを出て行きたくなるような。
乙女の常時アンテナびんびんの好奇心に接続して
どうしても動き出したくなってしまう
すてきなこと。
目の前に見せてくれるのは!
この広い世界で
リカの見込んだ人だけ。
オニーチャンただひとりだと思うので。
たすけてぇー……
どんどん重くなるリカの体を
こたつから引っ張り出すいいアイデア
あったらおしえて!
いそがないと
このまま寝ちゃうぞ?
もちろんあったかーい
大きいオニーチャン抱き枕を
ずーっとはなさないで
このまま逃がさないんだから。
春まで離れないで
つくしんぼうがお顔を出すまで
お外のことは知らないみたいに。
一緒のままになっちゃうよ?
二人でこのまま
いい夢を見ながらだよ。
……
ぐう。