立夏

『あの声は!』
わっ!
立夏のお部屋の方から聞こえた
大きな叫び声!
おどろいた……
何事だ?
行ってみよう!
たぶん
あっちのお部屋で──
あんなに大きな声を出すのは
どたばたしがちな
立夏ちゃんに違いないな。
すぐにつまづき
どこかにぶつけ
周りを巻き込んで
どたばた大変なことをしがちなのに
あまり反省せず
よく怒られているのは──
このおうちでは
だいたい立夏ちゃんだもの。
あれっ?
でも立夏ちゃんは
ここにいるな──
オニーチャンの前で
明るい笑顔を見せて
廊下を行く、
何があっても
元気だけが取り柄のいつもの立夏
ちょっと目を離すと
何をしでかすか予想もつかないけれど
今は──
ここにいるし。
立夏がうっかりと
お部屋を散らかしたまま放っておいて
誰かが滑った!
積んであった荷物が崩れた!
ということは
最近片付けたばかりだし
たぶんないと思う──
ということは!
もしかして
あのお部屋で
次くらいにそそっかしい
小雨ちゃんかな。
でも、小雨ちゃんも
最近は落ち着きが出て
おしとやか──
なんだかまるで
立夏よりずっと年上みたいに
急にお姉さんになってしまったの。
きっかけがあったのかな?
目を離したすきに成長する──
これでは立夏とずいぶん違うネ。
あれ、でも
そういうことになると
お部屋に残るは麗ちゃんくらいしかいないな・
まさか!
あの落ち着きを崩さない
鋼鉄のような
麗ちゃんが!?
この穏やかな昼下がりに
動揺のあまりに大声を!?
……まっさかー。
ともかく、急がなきゃ!
何があっても驚かない
心の準備をしつつ──
小雨ちゃーん!
麗ちゃーん!
立夏のルームメイトたちは無事なのーっ!?
何事もない姿を見るまで
立夏は──
どたばたしちゃうんだよー!