春風

『私たちの教室』
春風が王子様を嫌いになるなんてことは決してない。
どんなにひどい扱いを受けようと
永遠に愛が得られないとしても
春風のことを見ていないみたいに
放っておかれたとしても。
かまわない。
心が変わることはない。
春風はもうあなたに出会って
近くにいられるだけで。
同じ家で毎日あなたを見ていられる。
あなたのことを考えていられると
春風はうれしい。
胸の中を暖かくする知らない気持ち。
決して他の何物も与えられない
王子様が春風と同じこの世界にいてくれるだけで
同じ星の上にあなたがいると思うと
こんなにも春風の鼓動は激しくなる。
あなたが与えてくれた幸せな日々が
いま、笑顔でいられる春風を作って
これからはもうずっと、あなたなしではいられなくしたの。
だから。
がまんします。
それくらいのことで
怒ったりしません。
くすん。
本当は少し、悲しくなるけれど。
でも、怒らないです。
嫌いになることもないです。
ただちょっとすねてしまうとしたって
きっとすぐに気がつくの。
一人になって泣いているだけでは
春風はさみしい。
王子様の隣にいないんだもの!
だから悲しくても
しかたない。
私の全てがあなたのものになってしまった証拠なのだから
受け入れるしかない。
春風が王子様の教室まで
うきうきお迎えに行くと
なんだか恥ずかしいって
ヒカルちゃんが言うから
王子様もそうなの?
遠慮していたんです。
なのに、
それなのに、
うえーん。
春風ないちゃう。
あなたは春風を世界で一番幸せな子にするけれど
ときどき、悲しくさせてしまうと知っている?
王子様のことが恋しいの。
恋しいと、こんなにつらいのですか?
立夏ちゃんが上級生の教室まで行くのは
緊張するはずなのにがんばったなって思うけど。
神様、春風はどうして王子様の一つ上に生まれてしまったのですか?
立夏ちゃんみたいに明るい女の子ではなくて
どうしてじめじめしてしまうの?
いやがられてしまうかもしれないの。
立夏ちゃんが教室に来ても明るく受け入れてしまう
王子様はいけない人です。
春風の気持ちは
ちっとも気づかないで。
でも、王子様が
勇気を出して春風の教室まで迎えに来てくれたら、
想像すると
これはちょっと
刺激が強すぎるかもしれない!
春風、王子様が大胆なのはうれしいけど
こう見えても怖がりなところがある春風なので
適切な順序を踏んで
だんだんステップアップしながら
お付き合いをしていけたらと
思います!
靴箱に手紙とか
人目につかない校舎の隅で交換日記を渡すとか
誰にも見られないように
手を握ってくれるとか
私はその手の暖かさに
生まれてからなかったほどドキドキしてしまうとか
そうしてまいにち
あなたのことを
心と体でたくさん知りたいと思います。
だんだんと、
一歩ずつ。
ときどき、一段飛ばしで駆け上がったり
しませんか?
ふたりで。
あ、だけど
本当にこのとおりのことをしたいというよりは
春風が王子様と進みたいと
少しだけ知ってくれたら
今はそれだけでも。
そんなふうにして、たまに春風のことを考えてくれるようになったら
春風はそれだけで満足、
は、しないかもしれませんけど。
ひとつ年上の女の子でも
悲しんだり
怖がったり
喜んだりしながら
あなたのことばかりをどんなときも、
真剣に思っているということ。
あるのかもしれないな、と考えながら
ときどきこっちを見てくれて
目が合うことがあったら
春風はとても幸せな瞬間を迎えると思います。
どうか、
ときどきは気にしてください。
あなたを愛している女の子がいるんです。
あなたがいてくれてうれしいと
いつもときめいている春風のこと、
たまには見つめてあげてね。
それだけで春風は幸せになっているはずです。
やさしくしてね。
きゅんきゅん。