麗

『もうすぐ』
春といえばもちろん！
ダイヤ改正の季節ね。
今まで当たり前に見ていた駅の営みが
新しく押し寄せるスケジュールの前で
同じ形ばかりをとり続けることが出来ないことを知らされ
ついに砕けて失われていく。
ずっと忘れたくない
リズミカルに揺れる景色と
窓から差し込む光を
記憶に焼き付けるつもりで
何度も何度も
このままいつまでもと望んで
乗り続けて惜しんだ
私の愛した路線が
特に何の変更もなく
普通に続いていくと聞いたときの拍子抜け感も
この時期に欠かせないスパイスね。
あなたはこれから失われてしまうかもしれないものを
ちゃんと覚えてあげられるようにしている？
最後までちゃんと追いかけてあげられた？
私はいつも
自分を信じて行動することを心がけて
今度こそ失敗しないようにと決めたら
わりと予想が外れて
後悔ばかりしているわ。
なくなってしまった
普段当たり前に利用していた乗換えが
後になってから
ずいぶん変わってしまったとき。
あんまりきれいじゃなくて
人も少ないけど
通り過ぎるときに見る景色はのどかで
まあまあだったんだなって
本当にもっと早く気がつくべきで
取り返しがつかないことを
後になってから
さんざん
飽き飽きして
もううんざりするくらい
自分を信じられなくなる経験ばかり繰り返しているのに
人は失敗に学ぶって話は
どう考えても嘘だったんだな、
私を取り巻く何かが変わるたびに例外なくそんなことを実感するわ。
人間ってきっと
賢くない生き物なのね。
そんなことを思いながら
通り雨に遭遇したおつかいの帰り道。
濡れないように駅に飛び込み
雨でテンションが上がった小さい子たちの手をとって
家の近くに到着する時間を確認したら
傘を持って迎えに来てくれるように連絡できる
公衆電話へ一直線。
荷物を抱えた寄り道は
私がいる限り決して許さないつもりで進んだわ。
思えば、無事な帰宅の成功は
悲しい思いをしながら
いっぱいの変化を見送ってきた結果だと言えるかもしれない。
でも一年中泣いてばかりいるくらいなら
たまの雨に困るほうがまだいいような気もするのよね。
いいえ、もう泣いたりしない年頃だけど。
今は天気も気温も変わりやすいうっとおしい季節みたいね。
ふいに見つけた大事な景色があるなら
なるべく忘れないようにするといいわ。
どんな決意をしても失敗は付き物で
うまくいくほうが少ないなんて
最初から考えている暇はなく、
どうせ後悔なく生きるなんてことはできないんだから……
私は明日も
帰りは遅くなるかもしれないからよろしくね、