ヒカル

『お下がり』
夕凪のマホウがよく効いて、
みんなが喜んで外に遊びに出ていく。
今日はそんなに強い風もなかったし
たまに風が吹きつけても
マホウが効いてるからすぐやむんだって
休むように言っても戻ってこない。
太陽と雲が聞いてくれたのかはわからないけど
子供たちの心には
ずいぶん強い力が手助けに行ったようだ──
思えば、私たちだって小さい頃は
どんな季節で何が起こっても夢中になって
駆け出して行ったし──
年上のみんなをだいぶ困らせて
暗くなるまで遊んでいたような気がする。
あの庭を走っていく姿も
子供の頃の記憶と重なるところがあるし、
風に転がるボールを追いかけているのも、
ときどきよくわからない思い付きの遊びを始めるのも、
それから──
転んだのが悲しくてすぐ泣くのも、
そんなこと忘れたみたいに
立ち上がったら
面白そうな景色に飛び込んでいくのも
なにもかも──おぼろげに覚えているあの頃に似ているかもしれないな。
霙姉がふらっとやって来て
今日も子供たちと遊ぶのに付き合ってくれて、
私のことをちっとも昔と変わらないと言う。
家族で一番なくらいに
元気すぎてついていくのが大変だって──
そうすると、子供の頃の話と思っていたのは
つい最近の自分のことで、
走ったり転んだり泣いたり笑ったり
私は昨日も今日もそんなふうだったということだ──
そうかな?
心当たりがないでもないな──
みんなをよく見ている霙姉が言うんだから
きっとそうなんだろう。
だからたぶん──
夕凪のおまじないで元気を出して
風の中でも大暴れしているあの子たちは
もう戻れない通り過ぎた過去や
子供らしい際限のない無邪気さだけじゃなくて
もっと何か──
それは大人にも負けない、
今の私たちがまだ追いつけないような
たまにちょっとだけ肩を並べられるような──
とんでもない存在なのだろう。
背中を見てついて行って
学ぶことばかりなのは
私たちのほうだ──
よし!
また、いっぱい遊んでもらって
いろんなことを教えてもらわないとな。
たぶん、運動だけは長く続けてきた私たちのほうがちょっとだけ有利なはずだ──