夕凪

『なんでもあり』
マホウのみなもとになるのは
ハートの力。
胸のところにある
ハートマーク。
ハートの形をした
ハートマーク。
……?
どういうこと?
とにかく夕凪から生まれる恋のヒミツ
ここからやってきて
どこにでも広がっていく。
みつかる、マジカルな力のこもったあれこれ。
お人形。
コーヒーカップ
一筋の髪の毛が落ちていた!
みじかめ……
夕凪のものではない!
まさかお兄ちゃん!?
でも、とっておくわけにはいかないから
ゴミ箱に。
これは夕凪の手に余る!
とりあえず今日は
コーヒーにしてみよう。
おとなは
うきうきするんでしょ?
コーヒー。
恋のアロマでしょ?
コーヒー。
こんなにいいもの
使わないなんてもったいないからな!
夕凪くらいでも
お砂糖とミルク入りでも
ちゃんとよく効くおまじないを発明しなければ。
どうだろう
無理じゃない?
むりむり。
夕凪じゃあ
ミルク多すぎだもん。
なんて外野の声があっても
試してみたいんだもーん。
もはやコーヒーではなく
カフェオレまほうになったとしても
それはそれで力がこもっていればいいんだよ!
子供のマホウでも
ケースバイケースだよ!
舌が大人になって
にがーいのを
おいしそうに飲み干したところで!
あまいお茶請けがほしくなって
手を伸ばしたところにあったのが
ボンボンゼリーの入った甘さ控えめのチョコレートだったりしたら
さっきの霙お姉ちゃんみたいに
ちょっと悲しそうな顔をするし
それを横で見ていた夕凪が
霙お姉ちゃん!
おさとうと
ミルクで
助けてあげるよ!
って駆けつけたら
ぱーっとうれしそうになるし
需要あるよ。
カフェオレ。
あれ……
そういう話だっけ?
お兄ちゃんも甘さが足りない気分の時は夕凪に相談してね!
なんといっても
お部屋の机にアリが行列を作るくらい好評だよ!
あまさ。
というか
机の中に入れっぱなしだったようかん。
食べかけをちゃんと包んでおかなかったから……
でも、まだまだ寒いのに夕凪の周りにはもうアリが出るんだな?
春の予感かもしれない。
ずぼらなだけかもしれない。
こないだ台所をのぞいたとき
かじかんだ手をこすりながら
窓の外にゆれる赤い梅を眺めてびっくりしていた
春をさがしている春風お姉ちゃんのために
お部屋に呼んで見てもらおう!
おそうじも手伝ってくれるかもしれないし。
お兄ちゃんも見に来る?
追っ払ってアリはいないけど
ここを通ったっていう。
そろそろドキドキときめく予感がほしくなって
夕凪のところを狙ってやってきた子たちが
さがしていたもの。
それはきっと、捨てちゃったようかんじゃなくて
もうすぐ暖かさと共に訪れる
突風みたいな強烈さだよ。
はるいちばん!
こんなところでまず最初に見つかってもいいはずだもの。
見たこともない面白そうな何か。
心の中に眠る力がだんだん……
つくしみたいに顔を出す!
夕凪がまぜまぜかき混ぜるコーヒーにも
ハートの嵐が巻き起こりますように!