星花

『ふくらむ夢』
のどかで暖かな毎日だった春休みも終わり
明日は始業式です。
ちょっとあいにくのお天気になるかもしれませんが
みんな新しい服の準備をして
新年度の始まりを楽しみにしています。
あまり濡れないくらいの雨だといいですね。
たくさんのいろんな出会いがあるのに
濡れている服が冷たくて肩を落として、
なんてことになると
一年の最初を思い出して蘇る記憶がそれ!
という悲しい話が残ってしまいます。
気の利いたお姉ちゃんたちは
すでに傘の準備を始めて
子供たちも大事なことだと話し合いながらついていく。
さっきまでタンスの前でどったんばったんしていた大騒ぎが
そのままそっくり玄関に移動して──
次の旅立ちを目前にした
にぎやかな騒動は
いったい明日までにちゃんと片付くのか
だんだん不安になってきたところといった感じでしょうか……
でもたぶん
明日が来れば大丈夫。
そう思える理由があるの。
みんなが顔をそろえる春休み、
大変な騒ぎが起こらない日はないけれど
お互いを思うことでいつも事件は解決している。
ような気がする。
やがて、桜が満開に咲いている景色に囲まれたら
もうそれだけで
いつものように。
この景色の中で過ごした昨日までのように
私たちのうるさかった冒険、
たくさんの失敗も
こらえようとして流れてしまう少しの涙も
ぜんぶまとめて明るい笑顔の中に吸い込まれて
どうなるのかとやきもきしていた一日が終わる。
そのときにまた思うの。
みんながいれば大丈夫。
不安になる時、勇気を出して顔を上げたら
すぐそばにみんながいるのが見える。
勢いを付けすぎて転んでしまったり、泣いてしまったりしていないか
こんなにきれいな景色の中で
どんな時も星花を見ていてくれるのがわかるから
明日も桜の花が咲いているだけで
勝手にうきうきしている足が
星花を次の冒険の場所へ運んでいくのです。
お兄ちゃんは新しい学年になって
何か楽しみなことや挑戦してみたいことなどはありますか?
星花はまだ特に何もないので──
ひとまず明日の一番の楽しみは
蛍お姉ちゃんが帰ってきたら作ってくれるという
新年度を迎える日にふさわしい豪華なお料理なの。
星花、春休みもお皿洗いをがんばって
お手伝いがちょっと上手になった気がします!
みんなが待っているお楽しみの邪魔をしないでいられるか、
もしもうまくいって、少しは役に立つお手伝いができたら
誰にでも自慢ができる
すがすがしい新学期の始まりになるはずなの。
だから元気に出かけて、みんなに元気を分けられるくらいで帰ってこなくちゃ。
どこまでも続く桜が並んだ道を遠く眺めながら
背筋を伸ばして歩き出して
そしてまた──
帰ってくるときに、きれいないつもの眺めが
楽しかったって言ってる星花を
お迎えしてくれるんだったらうれしいな。
星花の好きな春の景色にお願いできるなら──
まだもう少し、散りきらないでいてください。