『風邪のベテラン』
無理せず休めば
あまり時間をかけずに体調は万全まで戻るであろう状態と
今、この段階で対処を間違えれば
大事な時期もベッドの中で引きずることになる
その難しい境界線の
正確な見極めは誰にとっても不可能で
経験とカンと
早めに意識することが重要だとする知識によって
多少は動かないといけない環境との兼ね合いで
風邪と一般的に呼称される体調不良は
人によって様々な形をとる。
全ては宇宙と共に消える定めなのだから
風邪のひきはじめは対応を優先して
多少のことは後回しでもいいのだが
そういう時に限って
おやつジャンケンに参加してみたくなるものだ。
わかるけれど
自制が大事。
自分の身を守るのは自分しかいない──
そこまでは言い過ぎだとしても
そのくらいの決意がないと
体調を維持することはできないのかもしれない。
きょうだいが多い家族の二番目の姉として
多くの場面をみんなと共にしてきた私には
休むべき瞬間が来たのだと
不意に天啓のようにひらめくことがある。
今、暖かくしてベッドで休まなければ
これはますますのどが痛くなり
おなかの調子もよくなくて、好きなものもおいしく食べられなくなるに違いない
私の家族の一人に
その時が訪れている──
カンは当たるほうだといえる。
だが例外となる場合としては
自分に高めの熱があると自覚できて
思考力と判断力が完全ではないときか。
これは
少しくらいならほうっておいても平気なのかな?
それとも、ただちに対処すべきであろうか?
わからなくなっている時点で
すでに問題なのだが
それでも、答えが明らかで一つしかなくても本人としては
誰かに言ってもらって
やっぱりそうなのかと
はっきりしたほうが安心するものだ。
そこで、顔が赤くて心配されるようになってきたので
自分ではまだ大丈夫と判断していても
すっかり完全に休むことにする。
後のことを悩むのも今は忘れ
思い残した全てを振り切って
栄養をとって眠る。
それだけができることの全てと信じながら。
渇いた喉に冷たい水がうっとりとしみ込む格別な一瞬に
このおいしさを味わえるならば風邪の引きはじめも悪くないと思うが
もちろん、悪いか悪くないかだったら
それはだめだろうとしか言いようがないので
やはり熱の影響があるのだろう。
風邪は治る。
さらば休日。
さらばデザート。
やがて宇宙の定めが訪れて全てが終わるとき
私は恐ろしい風邪と戦い
休んだことを決して後悔はしないはずだ。