さくら

『ちゅんちゅん』
ちゅちゅん。
うめのはなにとまって
ないているのは
いったいなんていうこ?
うぐいす?
それとも
カナリア
とんび?
やっぱり
すずめのこ
なのかな。
さくらがはしって
ちかづいたら
すぐにげてしまった
ちいさいちいさい
はねをひろげた
ことり。
おにわじゅうに
おひさまがあたって
おはなもことりも
ひなたぼっこしていたから
さくら、ちょっとくらいどたばたしても
へいきだとおもったの……
ようちえんのスモックふかふか
スカートがゆれてめくれて
ふわり。
おもいっきりはしったのに
にげられちゃった。
いまはすっかり
はるになって
ことりもでてきて
むしもでてきて
みんな、すばしっこい。
さくらよりちいさいのに
ささーっとはしってゆく。
れんしゅうしたの?
ついこのごろ
さくらのおにわにきたばかりなのに
どこでだろうな?
いきなりでてきて
はしりだすなんて
それではもしや
あーちゃんがじょうずにたっちして
すごいはやさで
さくらをおいこしていくこともあるのかも?
だとしたら
いままで
たべてはいねむり
たべてはころがり
なまったさくらは
みんなにおいこされて
じぶんだけころんでしまいそう。
それがぜんぶ、わかってしまう。
ことりもむしも
あーちゃんもそらちゃんも
みるみるそだって
さくらをおいぬくの。
はるって
かなしいです……
くっすん。
おはながさいてきれいなのに
なぜ?
ことりやむしが
さくらにはなかなか
つかまらないから。
あしのしたを
もぐらがゆく。
はっぱのしたを
へびがゆく。
くもがつつーっと
おりてきて
けむしがもじゃもじゃ
どこもかしこも
はるのよかん!
なの。
それなのに
さくらは
まだまだふゆをひきずって
おきにいりのピンクのうわぎをはなさないで
かぜがふいたら
すぐににげていく。
むしさん
くもさん
ことりさん。
おはなのはなびらまで、かぜにのって
そんなにいそいで、どこにいくのかしら?
おうちにかえるの?
だってゆうがた
くらくなったら
ふゆでも
はるでも
はやくかえらなくっちゃ!
なーんだ
さくらとおなじでは
ないですか!
おうちにかえったら
ことりさんのおへやには
あまーいみかんがあるかしら?
もうない、かもね?
うふふっ、さくらとおんなじかもね!
だってこれからは
はるなのです。
かわいいいちごもおいしいのです。
ぼたもちも!
かわいいよね?
ちゅんちゅん
ふゆのおようふく
タンスから、だしてもらった?
さくらはね。
お兄ちゃんとおそろいふくを
もうすぐ、つくってもらえるの!
いいでしょう。
きっと、いちごのがらがついているよ。
ことりさんがきっと
うらやましくなって
さくらのおむねに
まちがえて、いちごをたべにきたら
……
さくら、こわくてないちゃう。
うわーん!
お兄ちゃんは
さくらのいちごをたべないで!
さくらのおようふくで
お兄ちゃんとおそろいは
だっておとこのこは
いちごのおようふく
すきじゃないから……
おやまからおりてくる
うさぎか
ことりか
うーん……おとこのこっぽいのは
おさるか
ねずみか
ひとでか
くまさん!
だからね、
さくらはもうすぐ
おきがえをするの。
みかんはもうない
あたたかなおへやで
なんとなく、あまいかおり。
それは
あたたかなかぜにのり
ももいろのおはなや
おにわからみんなのこえ、
はるのときめきが
やってくるよかん。
なのだと、おもいます。