春風

『月と星』
まだ寒い日が続きますが
明日を乗り越えたらまた暖かくなるそうです。
春風が何よりも気になって、つい心配をしてしまう王子様も
あと少しの辛抱です!
もうすぐ私たちみんなのところに春が来るはず。
もしかしたら桃の節句と同時くらいに
うっとりとろけるような甘い春の香りが届くのかもしれないわ!
でもそうしたら
冷たく金と澄んだ空気の中
窓からふと見上げる可憐に輝く白い月の光や
小さく踊るようにまたたく星が良く見えるのも
もうまもなく桃色の春霞に薄くぼやけて
もしかしたらきれいな景色は今夜が最後になってしまうということに?
まあ!
そんな大切な夜を
このままぼんやりと手放してしまうなんて
そんなもったいない
もったいなーいこと
きっと切なくて
とてもできないですよね!
とはいえ、こんな寒さの中を遅くまで付き合ってもらうのも
小さい子の体は厳しいはずだし
みんなお疲れかもしれないし。
あれっ、でも春風が上着を用意してあげて
ほっとするような香りがうれしい飲み物の湯気が揺れる距離を
一晩中その人のことしか見えなくて
暖めるみたいにずっと何があっても離れないで寄り添っていられたら
何も問題はないのかしら?
なんだかそんな気がしてきたな?
これは──
すてきな夜空を見せてあげたい人を
春風ががんばるからと約束して
ちゃんと普段から鍛え上げた好きな人お手伝いパワーをビリビリ放電しながら
しっかり暖かな手をつないでいられると
自信を持って
ほんのちょっといつもより勇気を出して誘ってみても
まだ若い二人がこんなにも激しい恋に落ちたことに比べたら
少しも罪にはならないでしょう?
きっとそうです!
ええっ?
いくら一日の平均気温が上がったからって
いきなり天気に影響は出ないだろうって?
そうかしら──
その時になってみなければわからないことです。
春が来て木漏れ日の光が濃くなる小道を
二人でこっそり歩くとき
ああ、吐く息も白い冬の間にあと一度だけでも
あの降るような星空の下で
瞳と瞳で言葉を交わす瞬間を
次の真っ白な冬まで待っていられなくなったらどうしよう、と後悔するのかと思うと
これから一年が過ぎるまでいつまでもずっと
ゆっくり回る季節のあいだ何をしていても離れがたくて
あなたの腕をつかんでどんな時も
二人きりのときを永遠のものにしたくてたまらなくなってしまいます。
だからいいでしょう?
春風もがんばるから
ほんの一晩だけでいい。
この夜を大切に心に抱いて
これから一生を過ごしていけると思うの。
でも実際にどうなるかというと
きっと明日も変わらず
これからも一緒にいてくださいって
離れないんですけどね!
寒い夜には春風を信じてくれますか?
愛するためだけに積み重ねた力を
あなた一人に捧げる
この誓いを。
朝も昼も夜もただあなただけを思う。
愛しています。
私の王子様。
巡る季節の記憶を二人でたくさん作りたくて
いてもたってもいられないの!