春風

『昔のこと』
のどかな春のお庭にもだんだんと
緑の葉っぱが目立ちはじめ
もうすぐ私たちが迎える始業式のころには
やさしくて色とりどりに目を楽しませてくれる
今よりも少し先にある春の景色が広がっているのかもしれません。
それまではみんなで
また今日みたいに楽しいお話をするのかしら?
人気のある習い事の話題は続いていて
さんさん日差しの射すころまでに
スイミングスクールで泳げるようになりたいな、
でも春夏秋冬いつでもきれいな眺めをさらさら写し取れる
絵画教室もいいかもしれない、
なーんて
言うだけは言ってみる
夢と希望の未来が待っている子供たちだけど
あれもこれもと夢見る未来の予定がぎゅうぎゅうで
いったいどこまで本気なのか
ちょっとわからないですね!
春風が小さい頃と
そんなに憧れの形は
変わっていないように見えます。
できなかったこと、
ちょっと怖いけどできたら楽しそうだっていうことも
勇気を出したい気持ちになることは
きっとあるの。
でも、春風は結局スイミングスクールは
お友達に誘われたときの
体験教室の一回でやめてしまったっけ……
今よりもっと怖がりだった日のことでした。
でもあのとき、もしも
きっとできるよって背中を押してくれそうな
王子様がいたのなら
春風の見ている景色は今とは違っていたのかな?
それとも王子様は
春風はどこにも渡さない、
ずっとそばにいてほしいって
そう言って手をとり
引き寄せてくれるでしょうか──
みんなの希望の中で春風も興味があるのは
立夏ちゃんが映画を見てわくわくしていた
西部劇の早撃ち教室かな!
タンブルウィードが転がる砂煙の中、
西部の掟は先に銃を抜いたら無法者。
彼らを止めなければ──
だけど立ち向かう正義の味方ははたして
早撃ちを決め、荒野の町の人々を守れるのか。
とっても夢があるお仕事ですが
たったひとつの問題は
そんな習い事はあるのかな? ということだけですね。
これは途中から話が脱線していたのかもしれないわ。
王子様も春の乾燥した季節に巻き起こり何かと雰囲気がありそうな砂煙と
話の脱線には気をつけてくださいね。
もしも目に砂が入ったり
夢にあふれたすてきな未来の話を誰かに聞いてほしくなったら
まず春風のことを思い出して
どうぞ遠慮なくお部屋を訪ねてきてください。
春休みが終わるまでは春風もこの家にこもる夢見る女の子の一人です。