春風

『始業式』
だんだん寒さが和らぐ日々と
開いていく花の香りを感じた春休みも昨日で終わり
私たちの学校は今日が始業式です。
新しい学年に不安と期待の混ざり合う胸の中
ときめきを抱きしめて
向き合う誰もが少し緊張した面持ち。
久しぶりにさえぎるものがない
すっきりと晴れた輝くまぶしい空の色。
桜の花びらが揺れる道に
初々しいはじまりの姿。
きっとこれからは忙しくて大変なことも続くはずで
ふいに一人になると心配ばかり膨らんでいっても
祝福するような今日のさわやかな風の匂いを思い出せるなら
いつも初心に戻っていけそう。
うれしい晴れの始業式でした。
久しぶりに袖を通す制服は
今まで着慣れたものなのになんだか新鮮な気がして
ちょっと落ち着かないような家族の顔を見ていると
なんだかかわいくて
胸があったかくなってくるのは
春の陽気のせいばかりではない。
ぴしっと制服を着こなした私の王子様は
舞踏会に誘うように手を差し出してくれて
どきどきの新しい瞬間へと春風を連れ出していく。
もしもここに王子様がいなかったら
春風はまだ知らない学年なんて
怖くて一歩も踏み出せなかったかもしれないような
そんな気もするけれど
いつもかわいい妹たちに怖がりな恥ずかしいところは見せたくないから
たぶん普通に新学期を迎えていたことは確かなの。
それはそうですよね!
怖いからって新しい学年に進まないなんて
そんなもったいない!
これからどんな知らないことが待っているか
誰にもわからないというのに。
でも実際に
怖いと足がすくんでしまって
ほんの一歩、最初の勇気を出すには時間がかかることもある……ので
手を引いてもらいたいこともあるのが
臆病な乙女の胸のうちです。
信じてくれる人の手をとって
二人で並んで歩みだしていけるなら
こんなにうれしいことはない。
王子様、
一生でいちばんきれいな花咲く景色を行くお天気のもと
門出の日を迎えることができて
喜びを感じるのは
あなたがいてくれるおかげです。
小さな頃から今まで一生懸命積み重ねた
にぎやかな時にありがとうを告げて
今日は船出の日。
これからきっと春風は幸せになります。
つないだ手に誓うの。
勇気を出して踏み出した一歩に
決してこの日を忘れないと誓います。
あなたと積み重ねる日々に
こんな美しい景色を何度見ることができるかしら?
今日も明日も離れないで
寂しがりで弱虫な春風のそばにいてください。
これから一年、同じ学校でまたよろしくお願いします、と
春風が心に決めた王子様へ
永遠に変わらぬ愛を込めて。