夕凪

『なぞのしま』
お外から帰ってきたら
ひゃーさむいーってあわててきがえて
ふかふかのもこもこになる
元気な子供。
寒いから南の島に旅行に行けたらって話は
うちでもよく出るじゃない。
それは大人になってからなんだけども。
オフィスレディか社長か
博士か芸能人になってからのこと。
発見、新しいかがく!
おかずにかけたらあまくなる調味料。
ついでに冬場はあったかくなる効果もあったらなおよし!
そしたら別に南の島にいかなくてもすむなあ。
エメラルド色のビーチとサンゴ礁
輝く青空を背負って並んで揺れるヤシの木なんて
別にいらないよ!
いらなくはないか!
そんなわけだから今日のところはおうちで想像して
まだ見たことのないビーチをお絵かき。
そこでは月ももうちょっとだけ黄色で、おいしそうに光って
恋人たちが出会う景色も少しだけロマンティック。
腰みのをつけて揺れている夕凪たちも
いつもよりわずかに陽気ましましで笑顔ひゃくパーセント。
ひゃくさんパーセントくらいになれるかな?
テーブルの上にお絵かき帳が並んで
いちまい、にまーい……
ちびすけたちが
ひとーり、ふたーりお行儀よく座って
ときどきお行儀よくなく騒ぎながら座って
あっ、お兄ちゃんの分がないじゃん!
お兄ちゃんが描く陽気な夕凪が
ここにないじゃないか!
そんなのってよくないよね?
さみしいじゃない?
まず何よりも
お兄ちゃんの頭に浮かぶのは
うれしそうであばれそうで
今にも踊りだしそうな夕凪だよ。
その夕凪は
なんだか見たことのない踊りをするという。
想像の夕凪なのに
誰も思いつきもしないようなへんてこな動きで
くねくねするという。
腰みのをつけているからハワイアンなのだろうか?
びみょうなせんだな……
と、なるという。
気がついたら一緒に踊ってる。
となりでふしぎな
くねくねした動きを
とても考えられなかったような動きを
自然に。
うみのちから?
つきのまほう?
みなみのしまのまじょ!
いるかも?
ありえる!
でもその正体は何と
いつも元気で何も考えていない明るい夕凪だったんだよ。
お兄ちゃん、夕凪がおばかでよかったね!
よくないな!
まあそのへんはおいといて、
南の島の絵を描いて
暖かい気がして踊りだしたら
横で見ていた氷柱お姉ちゃんが
どこにいてもあんまり変わらないじゃない、
踊ってばっかりじゃない。
などと。
それを聞いた観月ちゃんが
広い世の中、たまにはそういう妖怪もいるからいいのじゃ!
えー……
ま、いいならいいか?
たまには生まれる、踊りが止まらない娘。
ゆらゆらと腰はくねる。
眠ってもベッドから落ちて
ひっぱったふとんで海苔巻きになっている夕凪だよ!
ヤシの木の下でも海苔には抵抗できずにくるまれまくっているに違いない。
ロマンティックな夜空は……
まあ、そのうち!
夕凪のお絵かき帳ではとっても星がきれい。
お兄ちゃんの夕凪は笑ってる?
まじめなお顔じゃあ、それはそれでまんざらでもない。
心の中から素直な絵を描いたら
見せて見せてー!
夕凪はよろこぶよ!