立夏

『スキーのシーズン』
ふゆがきた!
いや、もうだいぶ前から来てたけど。
とにかく来た!
知らないうちに寒くなっていた!
手のひらごしごしして
あっためるよー。
はあはあして
うろうろして
いくら寒いからって、背中を丸めていちゃいけないな!
ぴしっ!
あっむり。
まるっ。
ってなったりしているよー!
まるいのが四割。
今のところは元気が勝ち越し。
それもここまでのおはなしで
いよいよ風が吹いてきて
もくもくと曇ってきた。
じっとしてると、手の先っぽから冷たさがしみこむようだ!
えっ、なんだって?
立夏がじっとしていることなんてないって?
わかってないな、オニーチャン。
ぜんぜんじっとしてなくても
言ってみたくなるものなんだよ!
女の子らしいアピールだよ!
ばれっばれであんまり効き目がなくても
そこは気合でするんだよ。
はあー、さみいー。
あっためてネ。
ってね。
寒ければ寒いで
楽しいことあって
友達に誘われるし
スキーにもいこう!
スケートにも!
ラーメン屋さんにも!
ポテチも!
よくこたつに戻ってくるけれど
遊びに行きたいんだよ。
スキーかあ。
いいじゃん。
かわいいスキーウェアにヘンシンできるってだけで軽くテンションが上向き。
やじるしで言えば
こっちむき!
あっちかな?
ななめうえ?
いや、やっぱり真上だな。
のびのび!
でも考えたら
テンション上がってもさー
スキーって滑り降りるより
リフトの待ち時間と上に行く時間のほうが長いじゃない?
まあそんなこと気にしないでがんがんいくのが
わかさだ!
というわけだからどっちでもいい気はするんだけど。
解決できるならしてみない?
と思って科学的な解決策を求めて吹雪ちゃんに相談してみたら
降りる速さは摩擦の問題。
摩擦をかけて滑ってはどうですか。
って。
それスキーじゃなくて何かの実験……
あとは、降りる時間が長くて
上に行く時間が短いといいんだから
ヘリでカナダの高い山の上まで一気に上って
長い距離を降りていこう!
これは夕凪ちゃんのアイデア
ざんしんだ!
でも、そこまで行って
山あり谷ありの道のりを長いこと降りてくるんだから
一人じゃなくて気の合う人と行くでしょ?
つまりオニーチャンと行くわけじゃない?
じゃあカナダのどこかの山頂まで登るのも二人になるんだから
それはヘリでひとっとびしたらもったいないという話だ。
ね?
カナダのてっぺんまでリフトをのばして
ゆっくりゆっくり
ふたりっきりでのぼっていこう。
リカが最後までだれないで座りっぱなしで我慢できるかは
神のみぞ知る……
せっかく二人ならもっと激しくてもいいのでは?
みたいな。
もう少し近くに寄ったら
かたよって、リフトが傾いてしまうかな?
軽いつり橋効果の聞いた甘い空間、
寄りかかっていてもいいのならそれで……
なんてね。
そんな長いリフトはたぶん今はないから
そのうちできる将来のために
ここで予行演習しておこうか。
ぜひぜひ。
吹雪ちゃんがかけてくれるかもね。
頭いいし、好奇心いっぱいだし
ときどき無茶なこともする子だから。
ちっちゃい妹はこれだからな。
かわいくて目が離せなくて
いざというとき、リカはいなくてもいいからオニーチャンがいてあげなくちゃ。
リカはふだんからおいしいものを教えて
ラーメン屋さんまで一緒に行くことしかできないから。
オニーチャンも案内してあげる。
あ、知らないお店とかに連れて行ってもらってもいいよ。
ただじっとしていられないだけかもしれないから。
いやいや、ちょっとくらいはがまんして大人しくできるかも?
だからいつもそばにいてくれて
ときどき寄りかかってもいいなら
寒さにびくびくしている背中も伸びて
ちょっと身長くらいなら大きく変わる気がするな!