観月

『文化の楽しみ』
マリー姉じゃは
好き嫌いなく食べて
よく運動するので大きい。
一つ違いでもだいぶ体格が違うのは
年中さんに通うわらわなのでよく知っていること……
人それぞれ
子供もそれぞれの早さで伸びていく。
さくらは食べるのが遅いけれど
嫌いなものでも残さないで食べようとがんばっていて
なんでも遊んでもらうのが好きなたくましい子で
すこやかに伸びている。
泣き虫が治るかどうかはわからないが
いつも優しくて、明るいお姉さんになるであろう。
将来が楽しみじゃ。
だからあとちょっとの差で背がわらわと並び
いよいよ追い抜かれそうなところまで迫っても
理はかなっている。
もう小さかったさくらを抱いて
あやしてあげることもできないし
その必要もないのであろう。
抱いてあげていたのは後ろからママに支えられてであったが。
だからまあ
そんなにあやしてあげられたわけでもないが
かわいい甘えんぼうさくらも
一日ごとに大きくなっているのじゃな。
だからわらわも
伸びていないわけではなくて
運動するより引っ込んで
お茶と小皿のお茶請けをつまんでいるのが日常であっても
今の身長のままでずっといるということはないと思う……
わらわはたぶんそれはないと考えているが
兄じゃはどうであろう。
やはり早晩さくらに背の順で負けて
虹子にも追い抜かれて
もうちょっと運動しておけば
骨もたくましくなってがっしりした体つきの頼れるお姉さんになり
その気になれば兄じゃをおすもうで投げ飛ばしたりもできる
張り切り観月は
兄じゃの自慢の妹になっていたであろうか。
神事の舞踊も今より少し見栄えがよくなっていたか。
おせんべいをぱりぱりかじって
お庭でピンクのゴムボールを往復させるマリー姉じゃとさくらと
汗っかきの子たちの肌をなでる冷たい風に枯葉が揺れて落ちる景色を
縁側から眺める文化の日
霙姉じゃがさむいさむいと嘆いておったので
うきうきしたヒカル姉じゃがグローブとボールを用意したのがはじまり。
卓球が自慢でほぼ他のスポーツの実力がよくわからない霙姉じゃも
ヒカル姉じゃが相手となると結構見栄えがして本格的な投球に見えるな。
背があるからかの?
霙姉じゃも
ちびすけの時期には、いつもこうして眺めているほうだったと
いつもわらわとお茶をすすってお話しするのに
大人のお姉さんになってしまったら
やはり違って見えるな。
わらわはひとり、ちゃんとお姉さんになれるかどうかも心配しているというのに
今日はすっかり置いていかれてしまった。
大人の物まねをするみたいに一生懸命まじめな顔でボールを投げている
小さな二人がかわいかったから
お絵かき帳を広げてクレヨンを走らせるのがわらわの文化の日
色が足りなくて探していたら
最初は水彩絵の具を持って手を貸してくれていた星花姉じゃと夕凪姉じゃが
何度かゴムボールを借りて
一球だけ投げさせて、が
そのうち集まってきたみんなと一緒にお庭のほうが盛況になってしまう文化の日……
なぜであろうか。
体育の日があるのは先月だったはずなのに?
しかし、モデルが増えた分
お絵かきはなかなか思いがけぬほど描き込みがいがあってよかった。
吹雪姉じゃとユキ姉じゃは
ずーっとわらわの隣にいて
お庭にも出て行かないで見ていてくれたのじゃ!
うれしいものじゃな。
運動が苦手でも、ちゃんと大きなお姉さんになれるのだから。
吹雪姉じゃは、熱いお茶が苦手でコップのお水で寒そうだったから
わらわはユキ姉じゃのほうが
これからのあこがれで
目標にしていきたいと心に決めた
とても収穫の多い晴天の日であった。
せっかくの祝日なのだから
けんかをしたり泣いてしまったり
落ち込んだりするよりは
わらわはユキ姉じゃがすきで
ユキ姉じゃはわらわと吹雪姉じゃがすきで
吹雪姉じゃはおえかきの木の色使いがすき。
リアリティがあって良いちゃいろだと褒めてくれたぞ。
ちょっと水彩の色がクレパスでしまってそのまま使ってみたら
これがいいものなのか。
人に見てもらうというのは勉強になるぞ!
兄じゃもどうぞご覧あれ。
しょうしょう人数が多くなりすぎて
誰が誰やらわからなくなった今日のわらわのお絵かきを
ちゃんと全員見抜くことができたらいいな。
わらわもいったいどうなっているのか謎めいた絵で
赤い派手なのが夕凪姉じゃではないかな。
おちばかな?
大きいのが霙姉じゃとヒカル姉じゃであろう。
なにかぴかぴかしたものを投げ合っているし。
お庭の木より大きいが。
まあ、がんばって描いたのが一番。
楽しく書いたらそれが一等賞。
ちょっと気合が入りすぎても、ごあいきょうなのじゃ。