観月

『風の音』
遠くでまた大きな風が吹き始めたらしい。
教えてくれたのは風に乗って届くあやかしの声ではなく
きれいなお姉さんのお天気予報じゃ。
お天気予報とはおもしろいものじゃな。
みんながすぐに知りたくて
難しい顔をしてふむふむ真面目に見ているかと思えば
テレビの画面には晴れ空を喜ぶ明るい笑顔。
こんな眺めを何も不思議に思わないで
毎朝毎晩くりかえしている。
もしも何かがきっかけで
海晴姉じゃのかわりに
わらわがあのきれいな天気図の前に立ったら
これを幸いに
難しい顔で話し続けるいたずらをしてみて
いつも神妙な顔の人たちを
ちょっと困らせてみたい気もするが
そんなことをしたら海晴姉にずいぶん怒られるであろうし
できてもわらわひとりの一回だけの楽しみじゃ。
毎日お天気予報を頼りにしている人たちに申し訳ないのに
わざわざするほどのことでもないな。
それにこんな子供っぽいことばかり思いついているうちは
まだまだ人前には立たせてくれないのだろう。
学問を重ねて経験を重ねて
そうしてはじめて人前で見せられる笑顔──
というのもあるかもしれぬな!
ぐるぐる模様のお天気図によると
南の海で台風が発生し
また大きな影響などということがないといいけど!
もう台風はそろそろいいよ!
と、明るいお天気お姉さんもそのようなことを話している。
明るいお姉さんにこのような顔をさせる
台風もいけないやつじゃ。
こういうときにわらわが天気図の前に立っていたら
台風なんて全然大丈夫!
もう怖いことなんて何もありません!
みたいに自分の願いを込めて適当なことばっかり言ってしまいそうだが
そういううちはまだ人前に立たせてはくれないであろうな。
ん? 海晴姉のお天気予報はけっこう自分の考えであんまり予報と関係ないことを……
雨の予報でも、それはそれとしてたぶん明日も晴れるはずと毎日言っているような。
まあ、いいか。
明日からは秋雨前線というやつの影響で
天気が崩れる日が続くとわらわも学んだ。
やがてこういう予報が本当に必要なたくさんの人に話せる日が来たら
ちょっとかっこいいなという小さなあこがれのため
毎日いつでもお外で遊びたいさくらや青空のところへ行って
なんと!
雨の予報じゃ!
教えてあげるといいかの。
でも顔を見たらやっぱり
ええと……
もしかしたら晴れることもないでもない
そんな日がかならず
よいこのさくらたちのところにだけは来る
かもしれぬ!
みたいにひよってしまうかの。
兄じゃも一緒にわらわたちのところに遊びに来るか?
たまーにお勉強の成果が出てきりっとかっこいい
兄じゃの誇らしい妹になってみせるぞ!