観月

『カレーライスパワー』
おみず──
おみずは?
ごはんどきの
牛乳
おちゃ
コーヒー。
いや、小さい子はコーヒーというわけにはいかない。
なにしろ苦いので
なんだ
これ!
おおさわぎになってしまって
おおよろこびなので。
ごはんどきに、コーヒーでさわいでいたら
たべものをそまつにしない
よい子の約束を守れぬ。
怒られてしまうから
こどものカレーのお供は
牛乳になることが多い。
だけど今日は
お手伝いをする子が張り切って
喉が渇いたために
早めに品切れ。
おみずでいい?
わらわは……
カレーが食べられるのだから
なんでもいいぞ!
うれしいなー
ごはんが並ぶまで輪になって回っていたから
気がつかなかった。
カレーは──
からいということに。
あんまりからいと
みんなの顔の変化を見つけたさくらが
びっくりしてしまう
カレー。
夜になって
寝床に入っても
カレーこわい
カレーこわい
お兄ちゃんは
やさしい!
何があったのか、
寝付くまでそんなようなことを繰り返す。
小雨姉じゃのスプーンが
やけに重そうになるのも
辛いときのカレー。
残さないで
ちゃんと一皿、がんばって食べようとしても
涙がうるうる
こぼれそうになると
麗姉じゃがおろおろあわてて
兄じゃや、立夏姉じゃをつんつん。
小雨ちゃん!
私、ちょっとだけ
ほんの少し足りない気がするから
分けようか!
兄じゃの袖を引っ張って
むりやり話に巻き込むようにしている。
今日のカレーは
小さい子たちががんばって
うれしいなー
カレーだなー
じゃがいも、にんじん
皮をむきむき
蛍姉じゃが
こんなに!?
すごーい!
すごすぎる!
叫んで目をむくほど、量があったので
どうもこれは
たくさん作りすぎて
カレー粉の量を
間違えたのでは?
春風姉じゃと蛍姉じゃがうなる。
ちょうどいいと思ったんだけどな?
ちょっと、からいよ──
そういうわけで
からいのが、まあ
ちびにしては強いほうのわらわが
今夜はお水当番。
お水、おかわりの声が聞こえたら
おだいどころと往復して
はこぶのじゃ!
立夏姉じゃも後をついて来て
お水当番の見習い。
エプロンを付けて
うっじゅー
らいく?
習いたてなのは
海を渡った先の
人々の言葉。
あおい目をしたお兄さんお姉さんも
一年中暑い国も、こごえる国も
やっぱりカレーを食べてお水がほしくなったら
おねがい!
おみず!
ウォーター!
なのじゃな。
今日は、なかなか大変なごはんどきになったが
家族みんなが心を込めた準備をしたのは
できあがったカレーを見ればすぐわかる。
特別な力で、目にうつらぬものを見通すことができなくても
すぐに気がつく
愛情いっぱいメニュー。
しょうしょう
にんじんに皮が残っているが
とろーりやわらかいので大丈夫。
じっくりことこと
鍋をかき混ぜる蛍姉じゃの邪魔にならないように
ちゃーんとみんなで
さわぎすぎない!
ときどき、お口をふさいで
くすくす見つめあいながら
待っておったのじゃ。
やや、からいであろうか?
それともこのくらいなら
やがて舌に合う
大人の味であろうか?
無理しないで、
少々おのこしのお皿もあったが。
デザートのりんごも
むいてもむいてもおいつかないほどだったし
ごちそうさまは
みんなが大きな声で。
今夜の大人のカレーは明日、
少し味付けを調節してカレーパンになるという。
今度はおやつに
お弁当に
脇役になって支える人気者
カレーの活躍は明日も続く。
みんなのお楽しみも
もうしばらく。
明日の夜のメニューが決まるまで
カレーでうきうき
ずっとうれしいままなのじゃ。