吹雪

『タンク』
とにかく体力に物を言わせて
衣装製作はついに佳境を迎え、
著しく全身の力を指先に注ぎこんでいく過程なので
作業の途中で音を立てて布地が破れ、
立夏姉が手元を見つめて呆然となったのも
ある程度避けられない事態として
一応蛍姉たちにとっては想定内だったようです。
いくらでも直せるんだから気にしないでいい、
むしろハロウィンは子供がおばけに襲われないように仮装するんだから
ちょっとくらいおばけが来ても負けないくらい強いほうが
お姉ちゃんたちはうれしいんだと
そういう話をしていました。
元気なことは良いことです。
死者のお祭りや収穫のお祝いが形を変えて今に至ったのだと認識していましたが
もしや、子供の健やかな成長を喜ぶお祭りでもあったのでしょうか?
予想外の力を発揮した立夏姉や
同じくらい元気な氷柱姉たちは今回、とても頼りにされて
たまに休憩を挟みつつ、今も作業中です。
まだ未熟な私たちはお手伝いを終えて
小雨姉の指導のもと、家事の手伝いに向かう者、
希望して衣装班に加わる者などさまざまです。
小雨姉は、それぞれが自分の力を生かしてくれたらいい、
何の力もない自分の代わりに誰かが蛍姉たちを助けてくれたらと言いながら
家のお手伝いをしています。
力がある立夏姉は頼りになるとして
私の場合は──
役に立てる部分とは?
などを、考えています。
計算や採寸はある程度役立てる自覚はありますが
算数のテストの得点で最近褒めてもらえた星花姉と夕凪姉は
積極的に数字を扱う作業をねだっている。
だから私の今日のスケジュールは
もともとの予定になかった読書の時間がかなり増えた状態です。
家族みんなの様子を確認してお手伝いを調整するのが好きだという
海晴姉と霙姉のところへ行って
手が空いていますと伝えたので
もしこのあと手数が必要になったら
私を探して連絡が来ることもあると思います。
どこまで忙しくなるのか
人数分の仮装の計画に深くかかわったことのない私には
予想ができません。
率直に言えば
これば間に合わないのではないかという危機感もだんだん大きくなってきました。
まあ、蛍姉が大丈夫そうだと話しているから……
大丈夫だ、と考えることにしましょう。
あまりそわそわするよりも、どうもそれがいいような気がします。
こうして待機していれば何も心配することはないはず。
マリーたちにも、なるべく集まっていると
いざという時に便利かもしれないと話しておきます。
キミも時間の余裕ができたときにはこのあたりに集まっていると良いでしょう。
私は現在、特に予定はないままです。