吹雪

『ごあいさつ』
──おかえりなさいませ。
ご主人様。
三が日も過ぎ
冬休みは残りあとわずか。
お正月気分ばかりでは
もったいないと考えた
めまぐるしくイベント事を好む
海晴姉はみんなと相談したようです。
その結果、
何かと大変だった年末年始の体に
癒しを届けてほしいと
詳しい流れを把握するのが難しい展開となり
ただいま八歳である天使吹雪は──
年が明け、今年は九歳となる年のはじまりに
蛍姉にメイド服を用意してもらい、
ボタンをしめたレースの襟元から
引き締まった袖の先、
清潔な靴下に至るまで
姉たちの入念なチェックを経て
給仕に立つこととなりました。
何か御用がありますか?
なんなりとお申し付けください、
と──
このような言葉遣いが望ましいと教えられましたが
本当は複数人で行うと聞いた仕事なのに
たった今、時間になってもこの場に立っているのは私一人です。
これでは期待される労働力としての活動は難しいと思われます。
実のところ以前から──
早めに冬休みの宿題と大掃除、
新学期の準備を済ませて
家族で遊ぶ時間を多く作りたいと
星花姉や夕凪姉と話をしていました。
その三人で
用事を全て終わらせて新年を迎えたのは私一人となっています。
予定通りに物事を進めるのは
簡単なことではないと──
周りを観察していながら実感します。
でも、同じ癒しのお仕事を担う
立夏姉と小雨姉、麗姉が姿を見せないのは一体なぜでしょう?
あんなにたくさん
遊びたいと言っていたのにやはり大掃除や宿題がある?
ともかく私は時間があります。
すごろくに人生ゲーム、カードゲームにトランプといったゲームはもちろん
こま回し、はねつき、かるた取り、姉妹合わせ、
そして福笑い。
お正月の遊びは今年もにぎやかに
我が家にやってきました。
みんながキミと遊びたがって騒がしく
星花姉と夕凪姉は宿題を済ませようとがんばっています。
お正月遊びに飽きたころ、
私がどんな遊びをするのかは
まだ考えていませんので
どうかキミが決めて決めてみてください。
おそらくメイドの癒しとは違うものではないでしょうか?
お正月の過ごし方について確信をもって判断するのは
私の人生経験では足りない気がする
新しい年の──
よく晴れた一日。
そう、今日も使う機会に恵まれる
家族みんなの
正しい挨拶なら私も知っています。
改めて、
あけましておめでとうございます。
今年もどうか
よろしくお願いします。
私の知らないことを
どうかこれからもたくさん教えてもらいたい気持ちの日です。