吹雪

猫の日
にゃんにゃんにゃんで
猫の日です。
つまり猫が喜ぶ……
かというと、そういうことはあまりなく
さくらが庭で呼んでいた猫は
あまり反応もなく、すぐ逃げてしまいました。
たぶん猫には日付の概念がないのでしょう。
そして、人間である私たちも猫の気持ちはよくわからないので
しばらくにゃあにゃあ言って遊んでいたら
いつのまにか話題は大きく変わり
数日前にヒカル姉にお弁当を届けるついでに
剣道の練習を見学したときの様子を
座布団を二つ折りに曲げて構え
大きな掛け声をあげて振り回し
なにしろ座布団は両手で持って振り回すようにできている道具ではないため
面を打つ動作の途中ですっぽ抜け
あさひのミルクの用意をしていた小雨姉の視界を横切り
驚いた小雨姉が哺乳瓶を落として
とつぜん目の前からなくなったミルクの存在に
あさひがきょとんとしていたと思ったら
宙を舞う座布団に興味を持ったらしくて
抱きついてみたり
かじったり押したり引っ張ったり
あわてて止めようとする小雨姉は
転がった哺乳瓶を拾いに行こうとするようにあっちを見て
あさひから目を離してはいけないとこっちを見て落ち着かず
そのあとこの未知との遭遇を誰かに報告しなければいけないと思ったらしいあさひが
私たちのところまで座布団を押してきてくれて
拾って届けてくれたのなら頭のいい子だとびっくりしたあたりで
一部始終を眺めていた氷柱姉が
座布団チャンバラの注意をうながしたところ
霙姉も確かにその通り
小さい氷柱も良く座布団を投げて遊んでばかりいたのに
あぶないからと言われてやめたいい子なのだから見習うように、など
氷柱姉の矛先が私たちに向かったり霙姉に向かったり混乱するような話をはじめ
たどっていくとどうも
私たちの家の座布団遊びは
ママと海晴姉を創始者として、一番弟子の霙姉、春風姉たちに受け継がれ
ヒカル姉の大きな動きの流派もやがて廃れ
自分自身で体験した、振り回すと危険だという学習成果を元に
妹たちを指導してきた歴史が
今日、ついに末っ子のあさひに受け継がれたのだろうと
そんな話をする日でした。
受け継ぐとかいった話は関係なく
乱暴な遊びは良くないと思います。
夕凪姉は怒られて反省していましたが
あさひに伝わったかどうかはまだわかりません。
わかってくれたのか、飽きたのかは確かではありませんが
現在は、蛍姉が夕食後
タンスにこんなものがあったと持ち出してきた
高校生から中学生サイズの猫耳付きのぶかぶかパジャマを
かわいくて似合いそうとおすすめされた氷柱姉と麗姉が逃げ出したため
次に標的となったキミが動揺しながらも頼みを引き受けて
寝巻きは動きやすくゆるめにしておくものだ……と感心したらしい蛍姉の胸で
自分とペアルックなのかどうか認識しているのか、はしゃいでいるあさひが
もう目の前に現れた猫耳に夢中のようで
座布団への興味はおそらくもうあまりないのだと思います。
しかし蛍姉が表現していたペアルックとは……
こういう状態を言っても良いものなのだろうか?
赤ちゃんのフードについた飾りと
健康な体格の高校生男子が頭部の保温をする目的で着込んだ状態のおしゃれ……
おしゃれなのですよね?
氷柱姉が入浴後に髪の位置を保持しながら乾かす目的でつけていたカチューシャの猫耳
そうかもしれないし
寒い冬、さくらがぬるめに暖めてコップで飲んでいた
猫を見かけたらあげる予定だった牛乳を
お風呂上りにみんなで飲んでいるのも?
キミや夕凪姉たちは鍋で沸かすのが好みかもしれませんが
私は冷たいままでもおなかを壊さないほうで
この時期は小さい子と同じくらいのぬるめが好きです。