綿雪

『あったかボディ』
きょうは
あめ!
かぜ!
さむさ!
ていきあつの
しわざ!
なのだそうです。
みんなのところに大事な水を運んでくれる
もくもく雲が空を覆うお天気も
ときには
はげしい!
はりきりすぎてしまうの。
午後になって、
学校の窓から様子を見ながら
帰れるかな、
幼稚園の子たちは
濡れないで無事におうちに着いたかな、
小さいかわいいみんなが寒い思いをしていないか、
もっと遠い学校から
電車で帰るお兄ちゃんたちや、
麗お姉ちゃんも
駅から帰る途中は
風の中を大変な道のり。
濡れて冷たい服で歩くことになってしまったら。
氷柱お姉ちゃんのお気に入りの制服や
お兄ちゃんたちの大人っぽい高校の制服も
濡れてしまったら
すごくがっかりしてしまう。
明日着ていく服がなかったら困ると思うし
乾くのでしょうか!
誰も濡れないで帰って来てほしいの。
ユキたちの家だもの。
寒くて震えてしまう家族がいたらいけないの!
でも、願っても
雨はすぐには止まないんです。
ユキは
少し悲しくなってしまう。
あんまり強い雨を見たら
みんな濡れないで帰って来てほしい願いも
叶わないような気分になってしまう。
お兄ちゃんたちはユキみたいに体が弱いわけじゃないのに
こんな心配
おかしいですよね。
小学校のお姉ちゃんたちが集まって
とりあえず今は
自分たちだけでも、無事に帰らなきゃ!
強い風はびゅうびゅう
降りしきる雨はごうごう
どどーっ。
きゃー!
さいこう!
えーっ!?
夕凪お姉ちゃんはこういうときには
テンションマックスなんだって。
嵐が来たら
なんというかこう
見渡す限りどこにもパワーがいっぱい満ちているよう。
落ち着かない気がしてくるよね、
そわそわむずむず
勝手に動き出す手足と
いつもより激しい胸のこどう。
なんだかじっとしていられないよね!
窓から外を
じーっと見て
自然と
うわー!
声が出てしまうみたいなんです。
落ち着かないのはそうだけど、
声が出てしまうのも同じなんだけど
そんなに
盛り上がることなの?
落ち着かないといけないよ、
危なくないように考えて帰らないと
低気圧が激しくなったら
人間のほうが
気をつける番です。
いつか、頭のいい吹雪ちゃんが
お天気魔法を開発して
その時まだ小さいのは
夕凪お姉ちゃんの子供たち?
それとも妹たち?
きっと誰も怖がらないで帰って来れるようにする、
約束してくれたので
その日までは、ユキたちは自分の身を守って。
家族で誰もびしょ濡れで病気になったりしないように。
気をつけて帰ろう。
もし体が冷えたら
おうちで小さい子たちを追いかけて捕まえたらいいよ。
だっこしたら
あったかいはず。
追いかけた私たちの体も
暖かくなるのでは?
吹雪ちゃんの提案。
おうちの中でどたどたしたら
お姉ちゃんたちに怒られてしまわないかしら?
それに、お兄ちゃんやお姉ちゃんたちが帰ってくるまでは
ユキたちがお姉ちゃんになって
小さい子たちを見ていてあげないといけないんじゃあないかな?
追いかけ回したら、かわいそう。
あんまりちっちゃい子が逃げないように
体が冷えすぎる前に
おうちにたどり着けそう?
もしも、氷柱お姉ちゃんやお兄ちゃんたちが小さい子で
おうちで待っているとしたら
やっぱりユキたちは追いかけてつかまえようとする?
ちっちゃなお兄ちゃん
捕まえられるでしょうか。
とっても元気で、たぶん誰より足が速くて
男の子らしくて
すばしっこそう。
そんな話を
お兄ちゃんの知らないところでしていたなんて
ちょっと──
いけないですか?
気を悪くしてしまう?
でもどうしても
お兄ちゃんは、ユキたちにとっては
大きなお兄ちゃんなので
追いかけて抱っこして
ぎゅうーって
あったかいだろうなあ、っていうのは全部
空想の中だけのお話なの。
許してもらえますか?
だから今日の出来事は
けっきょくどうなったかというと、
ユキたちがおうちに帰ったら
かわいい無邪気な妹たちを
寒かったでしょ、おいでーって呼んで
抱っこしてあげて
ほかほかあったまって、
お兄ちゃんたちが帰ってきたら
あったかそうだね、
ユキたちも小さな妹もまとめて
大きな体で抱っこして
あったかいね。
みんながあんまり濡れないように気をつけて
自分の体を守って慎重に帰ってきたからです。
がんばって
なんとか帰ってきたね。
おかえりなさい。
ユキは運動が苦手で、他のみんなより
ほかほかではないかもしれないけど
あったまってほしいので
いつでも逃げないで、
すぐ捕まりやすいと思います。
お兄ちゃんが迷ったとき
ユキを選んだら
いいことがあるかもしれないよ。
捕まえてもらえたら
うれしい気持ちで
ユキはみんなよりあったまるかもしれないの。
どんなときでも大丈夫だよ。
捕まえてください。
待ってます。