春風

『オーダー』
遠い夜空にまたたく
光の粒は
まるで、ひとつまみを
そこらじゅうにばらまいたみたいに
散らばって。
小さなかけらが、呼びかけるように輝いて。
そのきらめくからだいっぱいを使いながら
ゆっくり息をするように
真剣に見つめる瞳がひとときだけ閉じるように。
胸の中でとくんと脈を打つ鼓動のように、光っている。
今にも届きそうなまっくろのカーテンに
ひろげた手の中に収まってしまうきらめき。
指を伸ばして示すと、その細い指先と変わらないくらいの距離で
近くにいる星たちも
実は手をつなぐのだってむずかしいくらい離れて
同じ光を隣で眺めることもできないほどの距離を隔たって。
昔の人も、私たちと変わらずに星を眺めながら
近くて遠い人との距離を飛び越えることを願い
星空を見つめる長い夜を過ごしたのでしょうか?
私たちの家の明かりが揺れる地面のはしから、もう一方のはしまで
大きく広がる宇宙に託した
冒険と恋と、どこまでも限りない想像力。
ロマンです。
夢があります、暗い夜の銀色と黄色と
大きな世界の中で光ってみようとするみたいに
夢見る気持ちを預けるのにぴったりの
ささやくようにきらきら、ちかちか、
見上げるとそこにある星の世界。
光をつなげて星図にして
華麗な物語を大空に描くなんて
昔の人はどうやってそんなことをひらめいたんだろう。
やっぱりいつの時代だって
恋をして、祈りを込める人たちが星を見ていたんですね。
神秘的な宇宙に思いを馳せる人は今もいて
霙お姉ちゃんも星を見つめます。
そう、遠い昔は旅する船を導いた。
時計のない時代に夜明けを待つまで、
あるいは明けるときがまだ先であってほしい人たちの夜、
いつまでもと願う、そんなさまざまな気持ちを、ゆっくりと歩む星の動きに見つけるように。
どんな夜も、静かに星を眺めて思いを込めた昔の人たち。
昔の人は暇だったんだな!
と、最後のあたりになると
霙お姉ちゃんの話はロマンがあるのかどうなのかよくわからないけれど
でも、そうですよね。
昔からたくさんの人がうっとり見つめた星空です。
そんな輝きが私たちの学校にも降りてきてくれたら
なんて素敵だろうと思うの。
やっぱり、恋人同士で見たくなるのではないでしょうか?
まだそんなに意識してくれていない人も
これをきっかけにいい雰囲気に変わることだって
あってもいいんじゃないかしら?
春風がきっと見に来てくださいねって
本当の本気でお願いすれば
絶対に来てくれるはずだもの。
必ず。
たぶん。
来てくれると思うの……
だから、もし来てくれたときを思って
春風は心を込めて
クラスのみんなと協力して、準備をしています。
夢のようにきれいな星の夜に
いつもの場所でもすっぽり包まれたなら
特別のとんでもない素敵が起こってしまったって、おかしくない。
そうですよね?
春風はその時を
期待してしまうんです。
恋するこの思いを届けたい春風と
もうすぐ恋をしてしまうかもしれない王子様。
ふたりの待っていたときが
もうすぐなんだよ、と。
なんとなくだけど。
根拠もないはっきりしない感覚だけど。
きっとあったらいいのに、とぼんやり物思う
もうすぐ迎える、まわりから隠してしまう暗がりに包まれる二人の時間。
なので、そんな春風の希望が叶ったこの連休は
夕凪ちゃんもあっという間に元気になったので。
明日の予定として、本の好きな子もじっとしているのが苦手な子も
やさしいお兄ちゃんやお姉ちゃんたちがついていてくれたら
うれしくて、面白い知識をいっぱい見つけて、ついでに少しお勉強も出来るようになるかも?
図書館に、みんなの好きな本を探しに。
児童書のコーナーもあるし、小雨ちゃんも小さい子に本を紹介してあげるのが楽しみだって言うし。
春風は星座の資料を調べられたらと思っています。
というか、実際はクラス発表は天文部に所属するお友達が引っ張ってくれて
春風は裏方のお手伝いさんだから、そんなにくわしくなる必要はあまりないのだけど。
でもやっぱりこの機会なので
星座の伝説に親しんでおこうと思って。
夕凪ちゃんもすぐ治って良かったですね。
昨日は早めに休んだらそれだけで
もう、風邪気味の不安な体調はすっとんでしまう。
元気のかたまりですね!
普段からそうじゃないかなあと思っていたけど
でも、やっぱり具合が悪そうだと心配になってしまうものね。
いざというときにばっちりお世話をする覚悟は、あまり意味がなかったけど
そんなの、無駄になってくれたほうが本当はいいって決まっている。
夕凪ちゃんは、お見舞いの差し入れのももとりんごが食べられないーって
不満そうだったけど
リクエストがあれば春風は何だって作ってしまいます。
元気になってくれたごほうび。
それから、今日はしっかり
暑くなってもちゃんと着替えをそばに置いて、健康に気をつけたごほうび。
こんなに元気な小さい妹を見ていたら
いざ図書館に行っても
つい、本来の目的を放っておいて
どうしたら春風にも元気な赤ちゃんが授かるか、調べてしまうかも?
ああ、どうしよう。
王子様も協力してくれますか?
明日の調査はなんだか
春風の大事な調べ物になりそうな気がするんです。