『たいへん!』
たいへんなの!
楽しいお出かけのデパート。
みんなで歩くだけでも楽しいのに
深まる秋の連休真っ最中。
家族そろって
今この時期だけのおしゃれな装いをした街を見に行くの。
盛りあがるに決まっているんだけど
盛りあがりすぎて
盛りあがりすぎて
いちごアイスを食べたヒカルお姉ちゃんが
ヒカルお姉ちゃんが!
朝からすっかり寒くなった日なのですけど
デパートの中は意外と暖かだったので
春風お姉ちゃんのおすすめで大人っぽい重ね着が似合うヒカルお姉ちゃんは
アイスがいいなって選んだんです。
わくわくしたときには
定番のいちご。
どんなときに食べてもおいしいいちごが
ますますおいしい気がするようになる!
ということで
ヒカルお姉ちゃんも人気のメニューを選んだの。
そうしたら
すごくあこがれのきらきらした目で
青空ちゃんも虹子ちゃんも見つめるでしょう?
星座のまたたく夜空のような
純粋に輝いている
とってもきれいな。
がまんは大切なんですけど
ヒカルお姉ちゃんは優しいお姉ちゃんだから。
一口だけの約束をして、かがんで味見をさせてあげたら
家からはいてきた落ち着いた色でちょっとしゃれたサンダルが
やっぱりはきなれなかったらしくて
つまづいたそのとたん
なんと──
なんと
アイスが髪の毛についてしまったの!
青空ちゃんも虹子ちゃんもおどろいたけど
ヒカルお姉ちゃんもあわてちゃった。
つややかでうるんだみたいに長くてきれいな
おしゃれなヒカルお姉ちゃんのいちばんすてきな黒い髪が──
ピンクになっちゃった!
よこのほう。
かがむと下に垂れてしまうところ!
急いで拭いても
あまいにおいがするとおなかがすくし……
痛むといけないからって
先に帰ってお風呂で洗ってあげたいって
霙お姉ちゃんが提案したから
まあ
霙お姉ちゃんなら
なんとなく頼りになるかな?
その場は勢いで納得してお任せしたでしょう?
でもやっぱり
二人も急にいなくなってしまうし
霙お姉ちゃんって
髪の毛のケアが得意だったっけ?
後になって考えてみたら誰も知らなかったし
放っておけないというほど心配になったわけでもないけれど
ご用もだいたい済んでいたころだったから。
とりあえず帰ることになって
星花たち全員が見たのは
たいへんなことに──
かつてないほどつややかでキューティクルに変わったヒカルお姉ちゃんが
問題の髪さえ何があったかなどすっかり忘れたように
美しく濡れたようにしっとり
動くたびにほどけてさらーってなるの。
ふだんあんまり手を入れないから
珍しく素直なこのチャンスにここぞとケアをしてあげたら
妙に効果が出たらしい──
ヒカルお姉ちゃんがちょうどきれいになるお年頃だっていうのと
まったく気にされていなかったために実はつややかになりたくてしかたなかった髪の底力や
ちょうど気候もあんまり暑くもなくお風呂が気持ちよかったので
いろいろあってこうなったらしい……
というか霙お姉ちゃんは
なぜそんな技を持っていて自分に使わないの!?
ヒカルお姉ちゃんも
数日したら元に戻るだろうってちょっと照れくさそうにしているだけなの。
もったいない!
すっごい
女の子っぽいやさしいきらきらなのに!
などなど
いろいろな驚きがあった日でしたね……
これも深まる秋の魔術なのでしょうか?
お兄ちゃんもどうか
何を食べてもおいしい秋と
甘いいちごのアイスクリームと
くいしんぼうのちびちゃんたちと
はきなれないサンダルと
霙お姉ちゃんの知られざる秘密の趣味には
ちょっと気をつけてくださいね!
星花たちが驚きすぎてたいへんなことになってしまいます。
それにしても痛んだ髪を切ったりすることにならなくてよかったですね。
星花はそんなに長くないほうが動きやすくていいんだけど
このごろはすーすーしてしまうもの。
うーん、星花も伸ばしたらいつかはあんなにぴかぴかするのでしょうか?
でもまだ急に変える勇気はないかな。
隙の多い首もとを守る
ながーいマフラーを編んで
夕凪ちゃんと二人で巻いてほくほく暖まってみたり
当分はこのままでいようと思います。
本格的な寒さがくるまでにマフラーを一枚、
クリスマスまでには作れそうならもう一枚、
うまくいって
できるとうれしい予定のひとつ。
今月いっぱいはハロウィン衣装のお手伝いがあるから予定はゆっくり進みそう。
たくさん教えてもらいながら
新しいこれからの準備をするの。