小雨

『何事も』
目標があれば
夏休みの毎日はきりっと引き締まり、
そうでなければ
だらだらした日が
続きがち──
とっても大事な
夏休みの目標は
始まる前に!
というわけで
小雨がこの間立てた目標は
毎日欠かさず
宿題を少しづつ進めて
早めに終わらせる!
というもの。
あんまり大きな目標では
ないのかもしれないけれど──
おうちのみんなが話す
しっかりとした目標を聞いても
小雨にはとても
達成できる気がしない──
せっかくだからと学校に通っていない
小さい子たちまで
目標を紙に書いて
家族の伝言板に貼ってあるのですけど、
すごいの!
だって──
こんなふう。
なわとびを
100回連続でとぶ!
今までに見たことのない
きれいでいい形の石を
お庭で見つける!
新しい種類の虫を
発見する!
オリンピックの応援を
全種目制覇する!
腕立て毎日20回!
どれを見ても
とても小雨が出来ている姿が
思い浮かばない──
あ、好き嫌いせず
ご飯を食べるのは──
できそう。
あ、でも
夏場はへとへとで
食欲がなかったりしたら
どうしよう──
小雨にはとても追いかけられない目標だらけの
夏休み前のおうちの中。
誰が達成できるかな?
みんなに刺激されて
負けてはいられないと
そんな気持ちを小雨ももらえている。
小雨は今のところ
毎日進める宿題は
順調です!

観月

『子供向けの怖いお話』
花子さんや口裂け女
人面犬──
夏も盛り。
寝苦しい熱帯夜を
背筋も凍るようなぞっとするお話で
やっと乗り切っていこうと
みんなの間では怪談が大はやり。
たとえば──
確かに残してあったはずのおやつが
どこかに消えてしまった。
不思議に思っていると
口元に食べかすが付いていると言われる。
いつのまに──?
といったような、
あまり厠に行けなくなるなんてことが
ないくらいの
ちょっと謎めいた
かわいいうわさ話じゃ。
それから、いたずらっ子をいさめる
役立つお話。
日頃は暗い影や
人の目につかない暗がりをゆくものたちがいる。
日暮れの遅いこの季節には
見慣れぬ影が
つい目に入ってしまっても、
その異形に驚いてはいけない。
恥ずかしがり屋で
臆病なあのものたちは──
見つかったと知られたら
何をするか予想もつかない。
闇に潜む子たちと
目が合う前に──
いつまでも遊んでいたくなる黄昏時も
あまり暗くなる前に帰らねば、
というわかりやすい教訓のための
誰にでもわかるただの作り話──
そういったものを子供に言い聞かせてゆくのじゃ。
ところで──
四谷怪談のモデルになったお岩さんは
実在の人物なのだが、
本当のところは誰に恨みを抱くこともなく
穏やかな人生を過ごしたのだという。
でも、だとすると
四谷怪談を演目で扱うたびに祟りが起こり、
今でも必ず四谷怪談を題材とする時は
関係者がお払いに行かねばならないと言われるのは──
祟りはどこからやって来て
誰に許しを乞うているのであろう?
もともとはただの作り話にしか過ぎないのに。
兄じゃもあまり帰りが遅くならないように気を付けるのじゃ。
おうちでかわいい家族がみんな首を長くして──待っておるからな。
フフフ。

海晴

『お買い物』
夏休みが
はじまる──
というだけで
どうしてもワクワク
気持ちは弾んで
ときめき色──
これから何かが始まる期待と
何が起こるかわからない大変そうな毎日への
ちょっぴりの不安と。
こんなふうにそわそわ
落ち着かない時って
キミはどうする!?
私は物心ついた時から
大家族のお姉ちゃんだったから、
みんなは大丈夫か
つい気になって
落ち着かないという部分も──
あるのよね。
宿題の予定は
ちゃんとできているか、
暑くてへばったり
していないか、
急かされるように
家中を見て回り
遊んでいるうちに
夏の楽しいお休みは過ぎていく。
うわさに聞いた話によると、
夏休みの過ごし方は
やることも決めず
なんにもしない
優雅な一日というものがあるらしいの。
本当なのかしら?
山を越えた向こうか
どこか遠く
広々とした海を渡った果てにでも
見つかるのかもしれないわね。
でも、そんなふうにして
のんびり過ごしている知らない人は
朝から晩まで
かわいい妹たちと
たまらなく大好きな弟クンに囲まれて
一日中泣いたり笑ったりする生活というのは
はるかな旅をして辿り着く
遠いどこかの夢のようなお話──
なんてこともあるのかもしれないわね。
今のところは、夏休みのお出かけなんかの予定も
まったくないので、
だいたい家で過ごすことが多くなる
今年の夏休み──
はじまりに
ついつい必要な買い物ばかりが頭に浮かんで
片付けきれない大荷物に囲まれて過ごす
なんだか先が思いやられる日、
なんていうのも
毎年恒例のお話よね。
今年は子供と読む本を多く仕入れた気がするな──
当の子供たちにはおやつのほうが受けが良かった気がするけどね。
ああ──夏休みもみんなに頼られるお姉ちゃんはかっこよくいられる?
不安と期待ではちきれそう!

虹子

『まなつのコンテスト』
あつまれ!
まちでうわさの
びじんしまいのいる
おうち。
いちばんかわいいのは
だあれ?
きめちゃおう!
なつがきたから
きめるといいよ!
りっかちゃんは──
まなつのおしゃれをして
みがかるくなると
かわいくなるからって
いっぱいのワンピースと
ミニスカートと
カラーコンシャスをおへやにしきつめた
トレンドカラーのうみにとびこんで
えらんだっていってた。
じゃあ、やっぱり
りっかちゃんが
このなつのいちばんの
おひめさまなの──
さくらちゃんは
なわとびがなんかいも
とべるようになって
みんなできょうそうすると
いかちゃんのつぎにながく
とんでいられるって
がんばってる!
じゃあ、やっぱり
さくらちゃんがこのなつの──
あっ、ふぶきちゃんが
いちばんおいしい
アイスクリームのミルクを
けいさんしている。
じゃあ、やっぱり──
いや──
ところが!
にじこ、なつの
ぼんおどりのれんしゅうで
こんなにかわいく
おどれるの。
だれがいちばんか
まだまだまだ
きまらない──
と、そこにあらわれた
みぞれおねえちゃん。
そのてに
まなつの
よろこび──
みずようかん。
みんなのいけんは
いま、
ひとつになる!
わーい!
やっぱりみぞれおねえちゃんは
やさしくて
きれいで
おやつマスター。
みんなのなつのあこがれなの。
りっかちゃんが
すてきなふくをすすめてる──
こんど、なつのいちばん
かわいいふくで
にじこといっしょに
ぼんおどりをおどってね。
なつやすみを
はじめようね!

氷柱

『後日談』
その後、どうなったかというと
私たちの素敵な王子様は
冷蔵庫に入りきらなくて困っていた分のレモネードを
おいしいおいしいって
ガッツで飲み干して
胃袋パンパン、
見事におなかを壊したという。
めでたしめでたし。
……
いや、何してるの!?
誰かが泣いているところへ
さっそうと駆けつけて
解決してあげられる立派な人間を
夢見ているのかもしれないけど
柄じゃないんだから無理しないほうがいいと思う。
結局、人を心配させるだけの
だらしない王子様──
間が抜けているのは顔だけにしておけばいいのに。
そんな人にもいいところがあるとしたら
具合が悪くて寝込んでいるところに
さっそうと駆けつけて
いつもの顔をも上回る
あまりの間抜けさに言葉もなく
怒りに任せて熱いおかゆを顔に押し付けようとする
優しい家族がいることくらいかしら!
まあ、その子はあなたのことを
王子様と呼んだりはしないみたいだけど──
やがてまた少し時間が過ぎ、
それからご主人様は
どんな経験をしたのかというと、
やっぱり優しい王子様には
優しくお世話をしてくれる素敵な妹がいる、
神様はちゃんと見ていて
私たちを家族にしてくれたんだって
頬ずりをされながら
とてもどんな顔をしていいのか思いつかない
稀有な経験ができて
とてもよかったのだそうよ。
あなたもあんまり
妹にこんな複雑な経験はさせないように
自分の体は大事にすること!
おわり!
寝てなさい!

春風

『信頼』
はいっ!
暑い夏には
春風の作る冷たい飲み物を──
どうぞ♪
足りなくなることが
決してないように
たくさんたくさん
作ります!
今日も家族は
元気でいてくれて──
春風を見ると
駆け寄ってきては
抱っこをせがんだり
手を引いて
つかまえた大きな虫を見せたがったり
甘えてばっかり。
王子様もちゃんと
春風を見つけたら
甘えていますか?
待っているの──
家族に遠慮なんてものが
ちっともなにひとつ
まるっきりなくて、
春風にしてほしいこと、
見てもらいたいこと、
それから
何か聞いてもらいたいことを
なんでも残らず
隠さないで伝えてくれたらいいのにな。
だって、
ときどきは
春風の話も
聞いてほしいので、
悩みも
なんでもないことも
今の気持ちを
残らず伝えたいので──
私たち家族って、
こういうものだと思ってもらわないと。
早く、春風が
王子様をどんなふうに思っているか
わかってもらわないと。
ところで──
あんまり夏が来ても
みんな薄着ばっかりでは
はしたないですか?
王子様の意見が必要な時です!
それから、夏だからといって
張り切って冷たいものを作りすぎたら
みんなを困らせてしまうかどうかも──
……やっぱり、
いくらなんでも
冷蔵庫をいっぱいにして
さらに入りきらないくらいのレモネードは
やりすぎたかも──
王子様に春風の過ごす
たくさんの夏のできごとを
ぜんぶ残らず伝えたい──
春風の何もかも
伝えたいんです。

吹雪

『日の当たる方へ』
今日も暑い日でしたね。
季節はもう
すっかり夏と言っていいようです。
春風姉や蛍姉の
献立の相談には
夏らしいメニューを選ぶと
採用してもらえる状況が多くなりました。
また、ヒカル姉や立夏姉が
服装の相談をしてきた時には
汗をかいたときの処理が簡単なもの、
そして比較的薄着の傾向を
選ぶと喜ばれる──
そんな気がします。
キミもやはり
大胆な格好に挑戦してみたい気分になる
季節なのでしょうか?
さらに、小さな子たちは──
いくら怒られ慣れているとはいえ、
外で遊ぶ時の帽子は
何度も言われて習慣になっているようです──
良い傾向です。
好きな色や形、
日差しの強さによって
きょうだいで相談しながら選ぶ子もいれば、
一番近くにあるのをつかんで
待ちきれないように真夏の日差しの下へ
飛び出していく子もいる──
問題があるとすれば、
大きく体を動かすと
どうしても帽子を落としてしまう、
それだけは避けられないということ。
遊びに夢中になって
帽子を落としたままの子供を
誰かが見ていたら
拾ってあげたい。
もしも帽子が落ちたのを一番に見つけたのが
私だったら──
そう、
今日は暑い日でした。
それでも、玄関先に誰でも使えるように置いてある
白と黒の帽子のどちらを選んで
庭へ遊ぶ子供のところへ向かうか、
考える分の時間はあったと思います。
きれいな白の
軽くて薄い素材で
使いやすそうな帽子。
夜のような黒色で
飾りのついた
見た目のおしゃれな帽子。
私が外に出たのは
わずかな時間──
どちらを選んだのか見ていた人は少ないはずです。
きれいなままに元の場所に戻しておきました。
暑い日差しにもかかわらず
外へ出ていく吹雪は──
幻のままにしておきます。
涼しいところにとどまる吹雪だけでいいはずです──
明日は、気持ちのいい風が吹くといいですね。