吹雪

ストレンジャー
科学的に観測できない
何者かが──
夜の闇に紛れて
角の暗がりに潜んで
近づいてきているといいます。
私たちのよく知る生き物に似た姿のものから
深海で──地の底で──極地で、熱環境で
その地に適応した見慣れない形状まで
どのような存在なのかは
出会うまでわからない──
ただ、まもなくやって来ることだけが、
すでにあちこちにあらわれはじめていることだけが
語られている。
特に、この季節には多くなると、
そのような存在もあるのだそうです。
興味深いですね。
どこか知らない場所からやって来て、
また帰っていく。
やがてはその正体が明かされるのだとしても、
今はまだ知らないことばかり。
でも、それではまるでなんだか──
まるまるとして
赤い顔をして生まれて、
魔法のように形を変え
大きくなり──目を輝かせて前へ進み──
この世に消えないものを
たくさん残してどこかへと去っていく──
あの者たちに似ているところがないだろうか。
人に観測されたかどうかの違いだけで
余りにも謎に満ちていて
暗がりに隠れるような秘密と相性が良くて、
やがて消えるようにいなくなってしまうのが
なんだかまるで同じで──
読み終えた本の後につぶやいた言葉だけが
いつまでも残るような、
歌の止んだ後の静寂に浮かぶ思いのような、
見たことのない眺めが
心を動かした時のことを
ずっと忘れられずに──ときどき誰かに話すような、
そんな儚いことばかりで埋め尽くされた思い出のような
何者かが──
あそこに、見知らぬ陰に、あるいはまた
気が付いたらもう背中の後ろにまで
迫っているのかもしれません。
そんなものに出会ってしまったら、
きっと──いつまでも終わらないおどろきを抱えたまま
忘れることなどできないでしょう。