観月

『冷たい雨はやがて』
ざあざあ
しとしと
ぽつり、
ぽつり
──
街を覆う雨は
もうまもなく夜になると
雪に変わり、
見渡す景色全てを
白く包み込むそうな。
毎日走り回った
いつものお庭も
手をつないで歩いた道も
まるで見たことのない
異国のような眺めに
すっかり染め上げてしまう。
そんな雪が
今年もやってきて
ついにこの夜──
みんなの街を変えてしまうという。
森を行くけものや
古きあやかしどもが
どこか人の知らぬ隠れ家にこもって
夜を過ごす頃──
暖房が効いたおうちの中で
あやとりをして遊んでいた子供が
ときどき窓にほっぺたを寄せて
すっかり冷えて戻ってきては
雪の降るのを待っている。
あの子らはきっと
いまだ人の踏み入れぬ景色も
足跡のない新雪
なんだかまるで
百年も待っていたみたいに
駆けだしていっては、
いろいろとわけのわからないものを抱えて
帰って来るのじゃ。
どうもひとごとみたいな
言い方をしてみたが
きっとわらわもよくわからないものを
また冷蔵庫に隙間を開けて詰め込みたいと
だだをこねるのかもしれぬな──
そう、あたかも
今日を逃しては
二度とこんな遊びはできないとでもいうように
競い合いながら
無茶をするであろう。
子供だからの。
そういうものじゃ。
兄じゃ!
今から窓に頬を当てて
見てくるが──
あんまり冷えていたら
温めてたもれ。
雪が降ったら
一番に聞いてたもれ。
兄じゃだけに
頼みたいのじゃ──