真璃

無人の城』
しっ!
聞いてみて。
わいわい大声が絶えない
マリーたちのおうち。
寒くなってきたけど
これから楽しいことが始まるのに
縮まってばかりいられない!
ひと時もじっとしているのが惜しいみたいに
みんなが頬を染めてホットな年末を過ごしている。
というのが
フェルゼンも知っているわがやの様子なんだけど
そこから一歩、
人のあまり通らない
暗がりの廊下へ
踏み込んだとたん──
しくしく悲しそうな声。
観月が言うには
あっちにある冷暗所が原因だというの。
ただでさえ家具も食器も
人に使われ
年を重ねて動き出す──
なんて昔からの言い伝えも
絶対ないとは言い切れない。
ましてや!
最近のご飯が
温まる鍋物や湯気の立つおうどんなどであった
ばっかりに!
みんなで選んで買ってきた
まるくてごつごつで
大きなじゃがいもは
暗がりに置かれ、
出番がないのを呪って
さみしく泣いているのだとか。
聞いて、この地の底を這うような
まるで強い北風がどこかの隙間から
吹き込んでいるみたいな音を!
ひえーっ!
家の中が楽しくても
わずかに道をそれただけであらわれる
暗がりは怖いわね。
フェルゼン、手をつないで逃げましょう!
明かりはあっちよ──