海晴

『おそろしいのは』
冬に向けて片付けを進めていると、
着なかった服──
読めなかった本──
とっておいた花火だとか
あの楽しかった夏にやり残した心残りが
次から次へと
じゃんじゃん姿をあらわす!
こんなに──
あったっけ?
買おうかどうか迷ったのは覚えているけれど、
そのあとちゃんと
思い切って、買ってはいたのだった──
覚えているような気がするのも、
わりと──うろ覚えのも──
とにかく部屋の中が
この寒くなり始めた時期に
夏の名残りでいっぱいだ!
吹き抜ける涼しい風が
心地よい海辺のような
夕暮れに訪れた静かな時間のような
不思議な錯覚を運んでくれる。
薄いかわいらしい服みたいなのは
来年まで取っておいてもいいんだけど──
面白そうな本だったりは
別に、季節を問わずに楽しんでもいい気がしてくるじゃない?
秋の夜長に
ゆっくりと眠りに落ちていけるような
穏やかな本がたくさんあったら、
よかったんだけど──
私の大好きなかわいい弟くんは
海晴お姉ちゃんがときどき
勇気を出して思い切った行動をとることを
知っているだろうか?
真面目だった長女としては、あまり経験のない
甘くときめく恋愛の本の話題作にも
手を出してみたり──
あるいは──
夏にふさわしい涼をとる──
ぶるるっ!
なんだか、今日はいつもより寒い気がするね。
気のせい──
別に、怖い本を読んだからって
本みたいなことが起きると決まっているわけじゃないし!
部屋の体感温度が下がっているのは
怖い話を聞いた時の血管の収縮とか
科学的に説明できるのは知っているんだから──