海晴

『夜の過ごし方』
たまには
汗ばむような
暑い日も──
まだ私たちのところを
訪れるのだけれど。
それでも、もう誰も
言わないの。
少し前まではみんなが合言葉のように
顔を合わせるたびにこぼれていた言葉。
まだまだ暑い夏が続いている、
早く秋が来てほしいのに──
なんてこと。
そう、季節は
もう誰が何と言おうと
すっかり秋。
ときどき吹き抜ける冷たい風は
私たちを人恋しい気分にさせるし、
夏の太陽を浴びて育った味覚も続々と押し寄せてくる。
ヒカルちゃんもさわやかな汗をかいて
過ごしやすい時期になったね、なんて──
珍しいことを言う。
あんがい、季節の変化に気が付くのかしら?
あるいは、お天気お姉さんの目にかなう弟子のひとりとなる可能性も──
なんて、
いろんな思いにふける秋。
これからしばらくは
気温も下がって、しとしと静かな時間が
流れることになりそうだけど、
そんな穏やかさの中
広い世の中をゆっくり考えたり
今の自分を見つめなおしたり
マイペースに過ごすことができる
読書なんていいころじゃないかしら?
ほら、同じことを考える人がいたのか
こうして家に帰ってみたら
廊下にはあちらこちらに本が散らばり、
無造作に投げ出された着替えの間で
悲しそうにこっちを見ている──
……
きっと、難しい本だったのね。
いつも散らかしてばかりいる
小さい子が背伸びしようとしたのかしら。
かわいそうに、もしよかったら
これも何かの機会!
私のところにおいで。
世の中にはこういう出会いもあるのかもしれないもんね。
で、どんな内容なんだろう?
なになに。
五分でわかる!
ふむふむ。。
良い子のための!
なるほど。
とっても簡単な!
ほうほう。
宇宙の本!
ちょっとー!
霙ちゃーん!
私のかわいい
霙ちゃーん!
お話があるんだけどいいかな?
今日はちょっと長くなるわよ──
秋の夜長にふさわしいわね!