小雨

『小雨の夏休み』
大騒ぎの声が
朝から晩までやまないにぎやかな夏休みも、
夜が更けて涼しい風が吹くころには
世界は静まり返り
小雨のお部屋も穏やかな寝息で
包まれる──
そんな時間に、どうしてなのか
楽しくて疲れているのはわかっているのに、
明日もきっと大変で
走り回る小雨だと知っているのに
なぜか──
変に目がさえて眠れない。
特にこれといって緊急の悩み事があるわけでもなく
悲しいことを引きずってベッドに入ったのでもない
優しい夜のはずなのに
小雨はどうやら──
小学生のみんなの協力のおかげで
宿題はもう日記の他は片付いてしまい、
気が抜けてしまいながら過ごす日が
ここしばらく──
そうしているうちに
夏のエネルギーの中を
ひいひい言いながら乗り越えていた小雨に
いつの間にか生まれはじめた
何か不思議な感覚──
こうして、時間の余裕が少しあるなら
もしかして小雨は
自分の気持ち次第で──
今までにない夏休みを過ごすことができるのではないだろうか?
これはあの、いつもの
寄り道に誘い込んで迷わせる悪魔の誘惑なのか
それともまさか成長のチャンスを目の前に迎えているのか──
何が起こっているのかは
小雨にはわからない。
ただ、少し眠れなくて
激しくて走り回った日にも
やり残したことがあるような気がして──
悩みでもないのに
ふしぎと、考え事をしているだけ。
おうちのみんなと──
新しい遊びをしてみたり
おいしいごはんを作ってみたり
そんなことができるような気がして
少しどきどきしているだけ──
本当に、小雨に何かができるのかは
誰も答えてくれないけれど
だけどなぜだか、夏の夜は
目が冴えて眠れない──
ただの暑苦しさのせいだったらどうしよう?
でも──それでもまあ、いいのかな。
小雨は明日のことを考えて、楽しみにしているんです。