ヒカル

『今の様子』
春風は今日も忙しい。
寒さが続く毎日に
みんなに栄養のあるメニューを食べさせたくて
がんばっているし、
ハロウィンパーティーに向けて
料理やお菓子作りに挑戦したい子たちのそばで
いろいろ教えるのも忘れない。
仮装は蛍が中心になって企画しているけど
どうやら春風が手伝いに顔を出している時間も多いし、
飾りつけやお手伝いにはりきる
小さい子たちが眠ったり、
ぎりぎりまで体を絞りたくてがんばる立夏たちなんかが
そのへんで眠ったりしていたら──
かついで背負ってまとめて連れていった後で
あたりを仕分けて片付けて
すっかり掃除機までかけてしまう。
家族の多い私たちが
にぎやかなお祭り騒ぎをするには──
いや、たぶん、普段の日常を続けていくのだって
春風みたいな子がいないと
なかなか難しいんじゃないか──
小さい頃からみんなのお姉ちゃんで、
いつも笑顔で──
泣いているのなんて、家族の誰かが困っているのを
発見した時くらいしかない。
おばけがやってきても、
節分の鬼を相手にしても
年下の私たちを背中に隠して
立ち向かう──
本当に私たちと同じ、
人間の体でできているのかわからなくなるくらいだ。
ちょっとくらい、魔法みたいな力が入ってきて
春風を支えていると聞いたって驚かない──
不思議なおばけがやって来る季節ならなおさらだ。
いつも世話になってばかりだ──
お返しというわけでもないけど、
このお祭りの季節を記録に残したくて
春風がカメラの練習をはじめたのは
さすがに間に合わなかったそうだから──
押し付けられる形が半分、
自分からできることはないか引き受けたのが半分──
騒がしいのが苦手でも
楽しい場に出ていくのには困らないようにするためか、
そこまで深く考えてもいないかもしれないけど──
この手元には、春風から預かったカメラがあるというわけだ。
私だってあんまり機械は得意じゃないけど、
練習に付き合ってくれる子を探すのは──この家では困らないからな。
明日は──忙しくなるな。
春風は今から分厚いアルバムを用意している。
来年も、同じ時期が来たら
いろんな思い出でいっぱいの
アルバムを見たいって──言い出したら聞かないんだ。