氷柱

『待ちわびて』
節分が過ぎて、
もうしばらく寒い季節を
耐えて行こうとするこの頃──
あまり出かけないでいるから
知らないんだけど、
どうやら世間では
次のお祭りが出番を待っているとか
いないとか──
そう、これからやって来るのは
もちろん春を祝う
ひな祭り。
他に何もあるものですか。
いいわよね、ひな祭り。
自由な生き方が選べるようになった時代、
彼氏くらい誰でも作れるでしょ、
とか
結婚して家族を持つことから始まる人生とか
誰も何も言わない。
誰の耳にも入ってこない──
でも、だからこそ
いい人を見つけたい女の子の
奇特な願いは叶えるのが大変になっているし、
夢を追いかける子を
氷柱はいつでも応援したいわ。
だいたい、本来の意味がなんだったって
女の子の健やかな成長を祈る役目は
失われることはないんだから
これからの世の中は、そっちの方面を盛大に押し出していけば
いいんじゃないかしら。
どんなに大変なことがあっても、
あなたの元気な姿や、
明るい笑顔が
いつまでも変わらないものであってほしいと
ずっと願っている人がいる──
どうか、それを忘れないでいて。
毎年そんな思いを込めるお祭り──
え?
女の子だらけの家に
なぜか男の子が空気を読まずに混ざってる?
まあ、そういうこともあるわよね。
だったらついでに勢いで
一緒にお祝いしても別にいいんじゃないかしら。
はいはい、元気でいたらいいわ。
くらいには。
ええ、まだ何かあるの?
ふむふむ、おうちのみんなの様子を見るに、
ひな祭りまで待てなくて
せめておいしいものでも食べて過ごしたいという
そういう気持ちがなんとなく
感じられてくるわね──
ついでにお祝いする男の子の分も
用意してあげながらね!
世の中──
元気な女の子をお祝いするお祭りがあって
私も昔は、ずいぶんみんなに囲まれていたらしいわ。
今は一人のほうがちょっと好きだけど。
まあ──それなら、
昔から退屈な時期に
男の子に分けてあげるくらいの優しさがないでもないなら、
別に誰かに言われたわけでも
なんでもなく──
お菓子を作りたい気分の時だって
人間にはある!
ただそれだけの、簡単な話をしただけ。
そういうこと。