立夏

『どっちへ行こうかな?』
お姉ちゃんたちに言われるの。
ちっちゃな頃から立夏はいつも
あっちにふらふら
目移りして──
どこへ行くのかわからない。
どっちへ向かうか
誰にも予想がつかない!
だから今日も、
お庭でおいかけっこをして遊ぶ
子供たちは、
いつも足の遅い子が捕まっちゃってばかり。
立夏が参加すれば
いい感じに追いかけさせて、
良い子の足に合わせたうまい逃げ方で
誰にでも捕まえさせてあげるのに。
お姉ちゃんたちに
逃げられてばかりだった立夏は、
どのくらい追いかけて
どのあたりでつかまえたらうれしいのか
ずっと長いこと経験して
よく知っているものだ。
横を見ると──
おままごとをするのに
子供役がいなくて困っているのを見つける。
リカ、演技力はさっぱり
自信がないし、
ドッキリを仕掛けるのも
サプライズを秘密にするのも苦手だけど──
でも、こういう下手な人ほど
やりたい!
ってなるものなんだって
霙おねーちゃんが言ってた。
立夏、やってみたいな。
子供の演技で
まわりを面白くしたい!
なんだったら、足りない役を
おばあちゃんでも
ペットでも
思いつきで呼んでほしい!
できないことなんてないって飛び込んで、
たまーに
うまくいくこともあるんだから。
あ!
小雨ちゃんがジグソーパズルを
はじめている!
ああ、リカは頭を使うことが
たいしてできないから
お手伝いはあんまりできないな──
でも、たまにたのんでやらせてもらう
はじっこのピースだけ
より分ける遊びをさせてくれたら、
小雨ちゃんが地道に完成させたときに
リカがなぜかうれしくなるかもしれないもんな──
今日も目移りする
楽しいことばかりが押し寄せる日常。
家族のみんながいる
あらゆる景色が立夏を誘うようだ。
あれもこれも
手を出さなくちゃ
気持ちよく年を越せないかもしれないじゃない?