春風

『黄金の腕』
日が暮れて、
いっぱい遊んだ子供たちが
お腹を空かせて帰ってくる頃。
楽しかった一日の報告と、
毎日するどく見つけてくる新発見。
そして──
大きくお腹を鳴らす音。
さあ、よく手を洗っていらっしゃい。
ここから先は
春風の腕の振るいどころ。
私の出番がやってきたのだから──
昔の自分たちを見るような
無邪気な瞳、
キッチンへ届く
食い入るような熱い視線。
よく遊んだ子供たちが何を求めているのか、
知らない大人は
この世界にひとりもいない。
お腹いっぱいに食べさせてあげたくて
みんなの好きなものを
山のように積み上げて
テーブルに並べてあげたくて──
そんなふうに思わない大人は
世界中のどこを探しても
ひとりだって見つからない。
だって、みんな知っているの。
夢中になって遊んだ
楽しかった日に、
お腹を空かせて帰ってきたときの
あのまなざし。
あの輝く表情。
いくらでも食べられそうな
あの時の気持ちを
誰だって昨日のことのように思い出せる。
そうでしょう?
だから、せいいっぱいに
多めにホットケーキミックスを入れて、
卵と牛乳も盛大に使って
お祭り騒ぎの時間を迎える子供たちを
手助けしてあげたいの──
この時のために身がいた腕前、
ううん、正直に言えば
自分で食べたいものや
あんまり年の変わらないヒカルちゃんや蛍ちゃんのリクエストで
鍛えられてきたんだけど──
まあ、細かいことはどうだっていいの。
王子様もお腹がすいているでしょう?
いろんなことがあった
一日もやがては暮れていく──
どうか、春風の用意する食卓を
楽しみにして
冬場の長い夜の時間を過ごしてみて──
みんなが家族と過ごす時間が
どうか幸せなものでありますように。
春風が少しだけお手伝いをさせていただきます──