『わたしの大好き』
今日もにぎやかな声をあげて
子供たちが帰って来る!
ひとりは悲鳴のような、
また別のひとりは安堵に息をつくような、
とーっても寒い日でしたね!
風が強かったものね。
わかる、わかります!
春風も学校から
暴れて跳ね回る髪と服の裾を押さえて
やっとの思いで
帰ってきたんだもの。
ああ、早く家にたどり着かないと──
みんなも寒い思いをして
帰ってくるはずなんだから──
みんな、風邪はひいていませんか?
王子様も暖かくしてくれていますか?
あったか甘酒も用意して
みんなの帰りを待っていました。
イチゴのクラフティもできたてあつあつ。
春風は──
みんなのために何かができたら
とってもうれしくて
跳ねてしまいそうで、
早足で帰ってきたの。
だって春風は
おうちの子たちが大好きで、
かわいいお姉ちゃんたちも大好きで、
ときどき無茶をするヒカルちゃんも大好きで、
王子様が大好きで、
だれかに喜んでもらえることが
とても大好きで──
いつもいつも
好きなことばかりで
ためらわない、
いけない子なの。
もしも子供の多い家じゃなくて、
もしも何もしなくてもいい
お手伝いさんに囲まれていたらと思うと
いったい、その世界に生まれた春風は
何をして過ごしているのか
考えられないですよね。
さあ、夕食の準備に
手間がかかるメニューを
もう一品。
きっと──王子様は喜んでくれると思うわ。
この間も──おいしいって食べてくれたんだもの。
足りなくなってきた塩は
棚の上の方から
取り出して──
手が──届くぎりぎりの──
──
あ!
ふわぁーっ!