『デイドリーム』
今日もよく晴れて
外でみんなが遊ぶのに良い日でしたね。
洗濯物も良く乾くし
日なたは過ごしやすいし──
落ち葉の季節に
お掃除が進んだり
ハロウィンも間近で
街を探索する子もいたり
木漏れ日の下のベンチで
うたた寝をする子もいたり
それぞれが深まる秋を楽しめる一日。
では、春風はどうだったのかというと
週末にやって来たいいお天気に
上がったテンションで
みんなのために家事をあれこれ済ませることができて
とってもうれしい。
だけど、ひとつだけ
王子様がみんなのもので
春風の独占するタイミングがなくなってしまう。
学校があれば
登校、休み時間、お昼に放課後──
いつでもチャンスを作れるというのに
休日ではそういうわけには行きません。
王子様は遊びたい盛りの小さな子たちの味方。
王子様はいつもお仕事や学校をがんばっているお姉ちゃんたちの味方。
春風よりも明るくて立派な
すてきな姉妹たちのみんなが一緒にいたいと願っている人──
両方から手をつかんで
離さないって言って引っ張り合い。
もっと春風が
そういうところにどしどし踏み入っていく子だったらいいのに──
心にメラメラ灯る炎で動く
鋼鉄のボディーで
足元はキャタピラで
危なげなく突き進んで
好きな人をさらっていく春風に生まれたらよかったな。
でも、しかたないので
晴れた日には春風は好きな家事をして
そして得意なことで
チャンスを作っていくしかない!
ああ、神様。
どうか王子様が春風のことを振り返ってくれる瞬間が
もっと増えたら──
そんな奇跡が起きたら
春風は、あとはその一瞬に全ての力を賭けるので
どうかチャンスだけを
一度でもいいから──
でも……
もし、もしも
奇跡が起きないなんて
悲しいことがあったら
春風は少し強引になってしまったらどうしよう──
そういえば王子様、
このごろは季節も良くて動物たちも過ごしやすいみたいで
よくお庭でみんなと虫を探したり
ノラ猫と遊ぶ王子様を良く見かけますけど
春風の良く行くおなじみのお店の
その近く──
どこからかやってきた
かわいい猫がご近所のアイドルになっているという噂があります!
春風の知っているお店から
確か、ほんの一つ前の通りの
次の角の赤い屋根のおうちの左か……右を進んだ先の空き地だとか……
ええと……
春風、がんばって案内をします!
迷ったりなんてしません。
しないと思います。
迷わないようにしたいです──
ああ、神様、もう一度聞いてください。
勇気やチャンスもがんばっていきます、
だからその時だけでいいので
春風にもう少し方向感覚をくだされば──